きものを着こなす

絹から見える広い広い世界/映画「シルク時空(とき)をこえて」鑑賞レポ

こんにちは。上杉惠理子です。

2022年10月25日、映画「シルク時空(とき)をこえて」というドキュメンタリー映画を見てきました。

着物の代表的な素材、絹。

着物が素晴らしく美しいのも、高価だと言われるのも、お手入れが大変と言われるのも、どれも着物が絹である理由。

お手入れが楽で、気軽に着られる木綿やポリエステルなどの着物が見直されています。

私は、着物の種類が増えて、いろいろなオプションが増えることは素晴らしいと思っています。

ですが、実際に着ていると、絹は本当軽くて着心地よくて、着たら干すだけ。絹の着物の素晴らしさや利便性はもっと見直されていいんじゃないかと思う。

また、日本の養蚕の歴史は長く、米作と並ぶ日本文化の土壌、絹を手放すことは大変なことなんじゃないか。

そんな思いで、新刊『教養としての着物』でも絹のことについて、結構書かせていただきました。

映画「シルク時空をこえて」はこの絹について、

☑️ 野麦峠を越えて製糸場に働きに出る娘たちの故郷のひとつ 飛騨の古川

☑️ 生糸輸出量世界一になった日本の絹を支えた製糸工場の町 長野県の岡谷と諏訪

☑️ 岡谷や諏訪などで作られた絹の生糸が世界に出荷された横浜港

☑️ 日本の生糸を輸入することで全米一位の織物の街になったマンチェスター

☑️ 日本のおかげで壊滅寸前の養蚕業が復活したフランス サン・ジャン・ジュガール

☑️ 染司よしおか 先代の幸雄先生のインタビューを撮った京都

…などなど5年かけて膨大な取材撮影をし、まとめたドキュメンタリーです。

今回は着物文化研究者で、著作も何冊もある中谷比佐子先生の主催の上映会。

上映後には、先生と監督のトークショーもある密度の濃い時間でした^^

監督の熊谷友幸さんは長野県の伊那谷出身。テレビや映像のお仕事が長く、最近は山の映像やドキュメンタリーを多く撮って来られたそうです。(映画の映像がとてもとても美しいのも納得!)

伊那谷や長野県南部は、小説・映画「あゝ野麦峠」の女工哀史の舞台です。

特に映画「あゝ野麦峠」は、近代化を目指す日本が生産量重視で、寒村の貧しい娘たちを劣悪な環境で働かせる様子が強調して描かれました。

熊谷監督は、地元の人たちに「俺たちの先祖はあんなにひどいことをしたのだろうか、調べてみてもらえないか」と言われ、取材を始めたのがこの映画の始まりだったそうです。

女工哀史の一面もあっただろうけれども、調べていくとそれだけでなく、工場側なりに工女さんたちを大事に食事や教育を用意していたこと写真が出てきたり、「仕事は楽しかった」と語る工女をしていた女性のお話も聞くことができました。

「あゝ野麦峠」の捉え直しをきっかけに始まった取材でしたが、日本の絹の歴史は1000年以上と古く、世界ともつながるもので、シルクの旅をたどるドキュメンリーになったとのことでした。

私、初めて知ったんですけど、まだ鎖国だった江戸時代後期、14代徳川家茂が、ナポレオン3世の要請で、お蚕さんの疫病で養蚕業が壊滅状態になってしまたフランスに、日本のお蚕さんの種紙(卵を産みつけた紙)を送ったことがあるんですって!

日仏貿易の最初はお蚕さんであり、鎖国時代から始まっていたことにびっくりしました!

あの鎖国時代に、この二人を繋げたのはどんな人だったのでしょうねぇ〜

また、アメリカの絹織物で有名なマンチェスター。

チニーブラザーズ社の拠点で、中国産よりも日本のシルクを高く評価し、日本のシルクを使うことで全米一の絹織物会社になったそう。明治から大正にかけて日米双方向で視察しあったり交流が映画で紹介されました。

絹について学ぶことが本当に多かったけれど、世界経済や外交についても考えました。

国際交流とか外交とか言うけれど、国を超えても人の交流は人と人。

それぞれの生業を支え合う交流はとても深く、そして長く、続くのだと感じ、うわべだけの国際交流になっていないか反省を促された気持ちにもなりました。

とまぁもう、ほんっとうに密度の濃いドキュメンタリー映画でした!

ちょうどコロナが始まった2020年春に完成したものの、上映機会が作れず、2年ほど眠って最近上映が始まったそうです。

東京での上映は昨日の中谷先生主催の会が初めてだったそうです。

▼上映情報などはこちらのHPからどうぞ! 
https://ashita-no-manabiya.com/

中谷先生のご著書にもたくさん、絹のお話が書かれています。私も『教養としての着物』の参考文献に、中谷先生の本を挙げています。

それもあって、昨日はご献本もさせていただきました。お渡しできてよかった!^^

この映画、私も1回見ただけでは、受け止めきれず。 

これは、私も上映会を主催するなぁと思いました。

和創塾のみんなや私の周りの着物好きさん、ものづくりの方々と一緒にまた見てみたい。

監督にも「上映会主催したいので、そのときはいらしてください」とお願いしてきました。

23区内でやるか、地元・八王子でやるか、悩む。

年明けになると思いますが、そのときはぜひご一緒くださいね^^

和創塾〜きもので魅せる もうひとりの自分〜主宰
上杉惠理子