きものができるまで

あれもこれも名古屋帯!名古屋帯の3つの仕立て方まとめ

こんにちは!上杉惠理子です。

今日のこの記事では、名古屋帯の仕立て方をテーマにお届けします^^

このお話を書くキッカケは、こんなご質問をいただいたことでした。

メルマガ読者さん

新しく仕立てた名古屋帯が、胴に巻く部分がずっと縫われていて着るときに、帯板が挟めません。

帯板が落ちそうで心配なので、これは縫い目をほどいてもらった方がいいのでしょうか??

えりこ

ほどかなくて大丈夫です!!というか、ほどいちゃダメですー!名古屋仕立てという仕立て方なのです^^
一巻目と二巻目の間に帯板を挟んでしっかり締めれば、落ちないから大丈夫です!

…とこんなやりとりをしたのです^^

和創塾のグループレッスンの中では、この帯の仕立ての話もじっくりするのですが、ブログでも書いてみようかなとこのご質問を頂いて思いました。

この話をすると、ご質問くださった方の

「なんで帯板が落ちるかもしれない、仕立て方にしちゃったんだろう?」

というモヤっとしたお気持ちにもお答えできるかと^^

きものデビューはこれからの方には、「なんのこっちゃ??」という話かと思いますが、「へぇ〜帯もいろいろあるのね」とサラリと読んでいただけたらうれしいです。 

名古屋帯ってどんな帯?

今、使われている女性のきものの帯には大きく4つあります。

  • 袋帯:袋帯はお祝い用に締める柄も豪華な帯。幅約30cm、長さ420〜450cmほど。自分で締めるなら二重太鼓に締め、着付けてもらうなら華やかな飾り結びにもできる。
  • 名古屋帯:幅約30cm、長さ360〜380cm。一重太鼓に締め、普段着を中心に幅広く締められる。
  • 半幅帯:浴衣のときによく締める幅16cm程度の細めの帯。(浴衣以外にも年中締められます^^)
  • 兵児帯:もともと子ども用のふわふわ帯で大人向けに今種類が増えています。浴衣やカジュアル用。

とあります。

今回の記事で扱うのは、幅広く日常使いができる名古屋帯です^^

一重太鼓に締めた名古屋帯

名古屋帯の仕立て方は3パターンある

普段着のきもので、よく締める 名古屋帯。

お祝いの袋帯よりも軽くて締めやすく、浴衣などによく締める半幅帯よりも、お太鼓に締めてきちんと感が出る。

名古屋帯は、胴回りは帯を縦半分にした幅15cm前後で二巻して

背中はもともとの帯幅30cmのまま、お太鼓に締めるわけです。

素材も柄も色も、本当にいろいろな名古屋帯がありますが、仕立て方で分けると大きく3つあります。

写真右から順に…

  1.  開き仕立て
  2.  松葉仕立て
  3.  名古屋仕立て

3本とも名古屋帯なので、幅30cm程度、長さは360-370cmほど。締め方も同じです。

ですが、お仕立ての仕方がちょっとずつ違いますので、順番にお話しますね♪

①  開き仕立て

幅30cm程度、長さは360-370cmの帯地を

そのまま開いただけのもの。

この帯を締めるときは、半分に自分で折りながら、2巻、胴に巻きます。

なので、写真手前側に、私がばっちり折った折り目が残っていますね^^ 

この帯を締めた正面はこんな感じになります。

② 松葉仕立て 

松葉(まつば)仕立ては、基本は、①開き仕立てと同じですが、締めるときに二つ折りがしやすいように

先だけ二つ折りにして、少し縫われているのがポイント♪

帯地によっては、自分で折りにくいものもあってそういうときに松葉仕立てで、先だけでも縫われていると締めやすい。

③ 名古屋仕立て

そしてこちらが名古屋仕立て。

胴に巻く部分が、最初から全部二つ折りになって縫われています。

「折りながら」巻く必要がないので締めるのは結構楽ですね〜^^ 

仕立て方は、九寸か八寸かで決まる

さて、この3つの仕立て方がある名古屋帯。

どの仕立て方にするかを決めるのは、締める人のお好み…の前に

帯地の特徴に依ります。

呉服屋さんに行くと、きものと同じように、帯地もお仕立て前のくるくる反物の状態で棚に置かれています。

最近は、仕立て上がった状態で販売されている帯も増えましたが、高級なものほど着る人のサイズに合わせて反物で販売します。

で、この巻いた反物状態の帯。

よく呉服屋さんに、こんな札がかかっています。

こっちは「八寸(はっすん)名古屋帯」

そっちは「九寸(きゅうすん)名古屋帯」

八寸名古屋帯 と 九寸名古屋帯、何が違うかというと、

反物の横幅が 九寸の方が 長いのです。

この「寸」というのは「尺貫法」の「鯨尺(くじらじゃく)」という
和裁の世界で今も使われている長さの単位です。

<きもののサイズで使う鯨尺>
1分     = 約0.38cm
1寸 = 10分 = 約3.8cm
1尺 = 10寸 = 約38cm
1丈 = 10尺 = 約380cm

1寸 は約3.8cm。昔話の一寸法師の「寸」というと、少しわかりやすいでしょうか?

まずはここで「寸」は長さの単位で、だいたい小指1本ぶんくらいと思っていただければ十分です^^

八寸名古屋帯と九寸名古屋帯を比べると…

九寸名古屋帯のほうが小指1本分、約3.8cm、横幅が広い。

この長い分の約3.8cmの幅は何のためかというと…

縫い代 をつくるため。

着られる仕立て上りの帯はどちらも同じ、八寸  = 約3.8cm ✖︎ 8=約30.4cmの幅になるわけです。

こちらの赤い名古屋帯は、もともと八寸の幅で織られた八寸名古屋帯。


縫い代がないのがわかりますか?

↓こちらも八寸名古屋帯です。

そしてこれが九寸名古屋帯。
  ▼▼

九寸名古屋帯は、ふにゃふにゃ〜と、もともとの布がやわらかいのです。きもの地と同じだったりします。

なので、中に帯用の芯地=帯芯を入れないと帯にならない!

だから、帯芯を入れて縫い閉じるための 縫い代が必要なのです。縫い代分、1寸=約3.8cm分長いから、九寸名古屋帯と呼びます。

八寸名古屋帯は生地がしっかりしているので帯芯を入れずに、そのままで帯になるので縫い代が要らないわけです。

着る側の立場からすると、どちらも仕立て上がれば同じサイズですから、八寸名古屋帯、九寸名古屋帯、と別に呼び分けしなくてもいいんじゃないかなーと思うのですが、今も、呉服屋さんに行くと結構使われているんですね。

話がなが〜くなりましたけど!!

名古屋帯の帯地には、九寸(きゅうすん)名古屋帯 と 八寸(はっすん)名古屋帯 があり、

九寸名古屋 = ほぼ③名古屋仕立て

八寸名古屋帯 = ほぼ ①開き仕立て or ②松葉仕立て

となるのが基本です。

開き仕立て or 松葉仕立てにする良さ

八寸名古屋帯はしっかりかための生地で、芯を入れなくてもそのまま帯になります。なので、最初から最終的な帯の幅8寸で布ができています。

八寸名古屋帯は芯を入れずに、そのまま帯になるので、開き仕立て または または 手の先だけ縫った、松葉仕立てにします。

なぜ、八寸名古屋帯は名古屋仕立てにしないのでしょう?

体に巻く部分を最初から二つ折りにして、縫い閉じてしまう名古屋仕立て。折りながら巻く、という手間がなく締めやすいので、八寸名古屋帯を名古屋仕立てにしても良いのですが…

名古屋仕立てにすると、縫い閉じる長さが多くなり仕立て代のコストがかかる!

だから八寸名古屋帯は通常、名古屋仕立てにしないのです。

開き仕立てにするメリットは、仕立て代のコストが下がるという以外にも

  • 開いてたためるので たたみ方が簡単
  • 帯板を間に挟めるので、帯板が落ちたりずれたりする心配が全くない
  • 自分で二つ折りにしながら締めることができるので、背が高い人は、帯幅を広げてバランスよく締めることができる!

最後の、帯幅を変えられるというポイントは、結構大事。

身長170cm以上ある方だと、真っ二つに折って締めた15cm幅だと身長に対して帯が細く、ちょっと頼りない印象になるのです。

なので、長身の方は少しずらして二つ折りにする。帯幅を16〜16.5cmくらいに、広げて締めると帯の存在感が出るのです。

というわけで

八寸名古屋帯 = ほぼ①開き仕立て or ②松葉仕立て

となります♪

なお、八寸名古屋帯の開き仕立てor松葉仕立てのお仕立て代は、お太鼓部分だけ縫うだけで3000〜5000円程度です。

わざわざ名古屋仕立てにする理由。

さていよいよ今回の記事も、ラストスパート!^^ 

九寸名古屋帯 = ほぼ③名古屋仕立て にするというお話です。

九寸名古屋帯の帯地は、ふにゃふにゃ柔らかい生地です。というか、もともと きものや羽織だった生地で作ることもあります。

 
↑この帯は、もともときものの反物だったもので羽織を作り、その余り布で名古屋帯にしています。

一本の反物で、羽織と帯のセットアップ 〜余り布のゆくえ〜 こんにちは! 上杉惠理子 です。 この記事は、2018年2月に書いたこちらの記事の続きのお話。 https://kimo...

九寸名古屋帯はこんなふうに、ふにゃふにゃ柔らかいので帯として締めるために【芯地】を入れて仕立てます。

帯の仕立て屋さんによる、帯の芯地の素材タイプについての、マニアックなブログを見つけたのでリンクを貼っておきますね。
https://shitate.org/obishin-type/
帯芯もいろいろ種類があるのね…!!ご興味ある方はぜひ!

さて。

それではなぜ、生地がふにゃふにゃな九寸名古屋帯を胴に巻く部分が二つ折りで仕立てた名古屋仕立てにするのか。

その理由は…

使う帯芯の量を、最低限にしたいから!!

九寸名古屋帯を開き仕立てにしたら…胴に巻く部分に2倍の帯芯が必要になる、ということなのですが…想像つきます??しかも、裏地生地も2m以上さらに追加で必要になります。

帯芯や裏地を減らしたい理由は、帯芯や裏地のコストを減らすという理由もありますが何よりも、締めやすさのためです。

帯芯が2倍になったら…身体に締めたときに分厚くなって、重い!!!

気軽にさらりと締められるように、名古屋仕立てになっているんですね♪

ちなみに、九寸名古屋帯も開き仕立てにすることがあります。これを「京袋帯」と呼ぶこともある。。ややこしい!!

九寸名古屋帯を開き仕立てにすると、締めたときに厚さができるだけ出ないよう薄い帯芯を使うことが多い。 

私もひとつ京袋帯を持っていますが…ちゃんと帯芯が入ってるのか!?と思うほど柔らかくて…締めにくいのなんのって!!笑
(色と柄はお気に入り❤︎)

他にも名古屋仕立てにする良さは、最初から二つ折りになっているので締めるときにサッと巻けることですね。

名古屋仕立てのお仕立て代は、帯芯代と裏地代を入れて、2万円程度でしょうか。

ちょっと変わった形なので、たたみ方に迷われる方もいますが、平らになるように、締めたときに見える部分に折り目をつけないようにたためば良いだけです。

名古屋仕立ての名古屋帯のたたみ方はこちらの動画をどうぞ!
 

名古屋帯は仕立て方も、色・柄・素材もいろいろあって楽しい!

名古屋帯の仕立て方。いかがでした??^^ 

こうして仕立て方が変わるのは、名古屋帯だけなのです。

華やかな織の袋帯は、みんな開き仕立てで仕立てますし、半幅帯も仕立て方はひとつですよね。

それだけ名古屋帯は、バリエーションが広い帯

ということだと私は思っています^^ 

帯にもいろいろあるんだなーと思っていただけたら嬉しいです^^

マニアックな話に最後までおつきあいくださり、本当にありがとうございました!!

和創塾
〜きもので魅せる もうひとりの自分〜
上杉 惠理子


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