きものができるまで

業界の常識を変え続けるきもの専門店/銀座もとじ 店主 泉二弘明様インタビュー

こんにちは!上杉 惠理子です。

私の初めての著書『弱者でも勝てるモノの売り方 お金をかけずに売上を上げるマーケティング入門』

この本の読者さんにマーケティング事例動画レッスンをプレゼントしております♪

動画プレゼント応募ページを見る

この動画レッスンをご用意するにあたり、思い切ってインタビューをお願いしたのが きもの専門店 銀座もとじの店主 泉二 弘明さまでした。

インタビューは当初、30分ほどを予定していたのですが、予想通りエピソードが多すぎて全く話が終わらず笑。前半後半合わせて、1時間ちょっとのインタビューになりました。

インタビューのメインテーマはマーケティングなので、経営や商品開発、お客様との関係づくりなどを中心に伺いましたが、きもののことについても大変勉強になりました^^

このブログ記事では、泉二さまのお話の中から特に、きもののお話をピックアップしてまとめました。

きもの店として、新しいことにチャレンジし続ける泉二さんのお話、ぜひお読みくださいね!!

お話を伺った場所は 銀座もとじ 大島紬店さまにて

改めて、銀座もとじさんは、このブログでも何度かご紹介している私も大ファンな銀座のきもの専門店さんです。

銀座もとじ 公式HPはこちら
https://www.motoji.co.jp/

お店に並ぶおきものは、数十万円単位、100万円を超えるものも。

『美しいキモノ』『きものサロン』などきもの専門誌にもいつも衣装提供をされていて、もとじさんがいなかったら きもの雑誌は雑誌を作れないのでは、というほど。

お忙しいから難しいかなぁ、、と思いながらもダメ元でお願いしたら、店主 社長の泉二(もとじ)さまがなんとかスケジュールを開けてくださいました。

しかも撮影は17時から…3つの店舗のうちのひとつ大島紬店を営業時間にもかかわらず、貸切でお話を聴かせていただきました!!

この日の泉二さまは、今回は明るいベージュ系のおきものを選んで待っててくださいました。

「姫(どうやら私のことらしい)が来るから、何を着ようかなと思って」とのこと!!

このお写真ではわかりにくいのですが、上前の衽部分にきもの地と同系色の糸で源氏香の刺繍がさりげなく入ったおきものでした。

「男のきものは無地が多くてつまらないからちょっと刺繍を入れてあるんですよー」と見せてくださいました。(なんておしゃれな…!!!)

そんな楽しいお話からインタビューは始まり、ゆっくりとお話を伺うことができました^^

きもの業界の常識 価格表示を変える挑戦

きもの専門店 銀座もとじは、店主の泉二さまが二十歳のときゼロから立ち上げて創業40周年を迎えられます。

この40年でたくさんのチャレンジをされてこられました。

まずひとつめがが価格表示の変更でした。

私たちがショッピングに出かけて、素敵な洋服に出会ったとき値札ももちろんチェックしますよね。

値札を見て、買おうかな、どうしようかな、と考える。買おうと思ってレジに行ったら、値札のお金を支払う。

ですが、きものは違ったのです。

お店に並ぶ反物についている値札。10万円、と書いてあったら、それはあくまで反物そのものの値段なのです。

きものとして着るためには、反物代に加えて、裏地(胴裏、八掛)の代金、お仕立て代… と追加されるのが普通。

結局10万円の反物が20万円になる、ということが呉服業界の普通でした。

今も、多くの呉服店が昔からの「反物価格表示」です。仕立て方法などにオプションがいくつもあるから、というのが大きな理由です。

数世代前は、反物だけを買ってきて自分で縫ったり、お家にある裏地を付けたりしていたので反物だけで売ることがお客様にもメリットがありました。

ですが、今は違う。
値札の金額で、着られるものが手に入ると思ってしまう。

初めて、きものを興味を持った人が、何も知らずに呉服店に入って反物を見て、「これなら買えるかな」とワクワクしてお店の人と話したら…金額がどんどん増えてしまう。

しかも、お店の人には「それが普通。知らないの?」という顔をされる。

…自分がその立場になったら、悲しくなっちゃうだろうなぁ。。涙

1979年、電話一本でおひとりで呉服屋さんとして独立した泉二さんは、このお客様の表情の変化を気づいた方でした。

泉二社長

八掛、胴裏、お仕立て代…と伝票を書いていくとお客様の顔が歪んでいくんです。これはいけない、と思いました

そして、泉二さんはきもの業界で初めて

お仕立て代込み価格表示

を始められました。

しかも、きもの雑誌に衣装提供をしたときにその値段まで載せちゃったから…呉服業界はみんなびっくり!!…かなり叩かれたそうです。

きものって、お野菜みたいに「相場」の感覚がわからないし、書籍と違って小売価格も決まっていない。

なので同じ商品でも小売価格にはお店によって、かなりの差が出るんですね。

それがお仕立て済みでこの価格と、ばんっと雑誌に出るって…いやぁ…
激震だっただろうと思います^^

その後、泉二さんが始めた「お仕立て済み価格」は少しずつ広がっています。

今は他のお店でも「お仕立て済み価格」を採用されることが増えています。

今のもとじさんではさらに「お仕立て済み&税込 価格表示」です。

もとじさんで扱うきものたちは、数十万円のものが多いので消費税でも数万円変わります。

お仕立て代も消費税もみんな入った金額なら、反物だけの価格よりもパッと見た値段はもちろん高くなります。

「あ!安い!」と、衝動買いはしてくれないかもしれない。

だけど、きものは反物で持っていても仕方がない。着るものだから、かかるものはちゃんと表示してくれている方が安心だし、納得して良い買い物ができる、と私は思います。

「業界の常識は 世間の非常識」

と語る、業界を変えてきた泉二さまのお話はまだまだ続きます。

きものの原点 お蚕さんを銀座で育てる

きものの多くが、絹/シルクでできています。昆虫のお蚕さんがサナギになったときにつくる繭を糸にしたものが絹です。

泉二さんには息子さんがいらして今、銀座もとじの二代目としてご活躍されています。その息子さんが小学5年生の頃、お父さんの泉二さんに聞いたんだそうです。

「お父さん、きものって 何からできているの?石油?」

と。

泉二社長

そのとき、息子だけを養蚕農家さんに連れて行ってもよかったのですがきものがお蚕さんの繭からつくられることをご存知ない方がいるのでは?と思ったんです

…ということで、きもの一反分をつくるために必要な、

2700頭のお蚕さんを銀座のお店で飼ってみた!

お店の商品を全部片付け、半月間、お蚕さんのために営業休止。当時、銀座の昭和通り沿いに1店舗しかなかったのに!!

銀座でお蚕さんを飼うのは、ものすごく大変です。

特に大変なことが、お蚕さんが食べる桑の葉っぱを用意すること!!

お蚕さんは新鮮な桑の葉しか食べません。しかも、ものすごい量を食べます。しかも、2700頭…!

毎朝、前橋まで桑の葉を取りに行き、繭になるまでを見届けたのだそうです。

泉二社長

このとき 自分がきもの屋でありながらお蚕さんが何メートル糸を吐くのか、きもの一反に何粒の繭が必要なのか、知らずに販売だけしていたことにシャベルで殴られたようなショックを受けたんです

このときは、息子さんはおちろん、息子さんと同じ学校の子どもたち、そしてきものを着るお客様もたくさん、お蚕さんが育つのを見学に来られたそうです。

もとじさんではその後、数年おきに、きもの1反分に必要な2700頭のお蚕さんをお店で飼う企画をされています。

私も2016年に、もとじさんで初めてお蚕さんが成長する様子を見せていただきました。

私、小学校のころ、理科の授業でお蚕さんを飼ったときに、お蚕さんは苦手と思ってしまったのですが、もとじさんで一緒に桑の葉の餌やりをさせていただいたら、あっという間に苦手意識を克服。

不思議なことに、見ているうちに可愛くなってきて2週間、毎日のように遊びに行ってずーっと見ていました笑

お蚕さんは2週間で何倍にも成長しある日突然、一気に繭になります。

そして、その繭をそのまま座繰りで糸にする体験もさせていただきました。

お蚕さん1頭で約1kmの糸を吐き、自分で繭を作ります。人間はその繭を、湯に漬け、切らないように糸をひき出し絹糸にします。

カラカラカラ…

カラカラカラ…

左手で座繰りを回し、糸を巻き取っていくと右手側の鍋には孵化できなかったお蚕さんが出てきます。

お蚕さんの生命と引き換えに、きものはできている。

そう思うと座繰りを回しながら涙が出そうになりました。

と、同時に 左手に巻き取る絹の糸が、本当に美しい純白でキラキラと輝いて見えました。

絹の糸は、お蚕さんの生命そのものなんだと思いました。

このときの もとじさんでの体験は私自身にとってもものすごく学びになり、あのときの想いは今もよく思い出します。

お蚕さんは見るのも苦手!という方もいて、全ての人に受け入れられるわけではないけれど、

きものの原点からお客様に伝えたい

という 泉二さんの熱い想いは多くの人に影響を与えていらっしゃいます。

素材づくりから商品開発に関わりたい

「お父さん、きものって何からできているの?」という息子さんの何気ない質問から、銀座のお店を半月休んで きもの一反分に当たる2700頭のお蚕さんを育てた泉二さん。

この企画で、きものはお蚕さんの繭の絹でできていることを深く深く理解された泉二さまに新たな夢ができたそうです。

それが…

糸づくりから、きものの商品開発に関わりたい。

泉二社長

一に素材、二に素材、三、四がなくて、五に素材だと思っているんです

しかしながら、日本の絹糸生産は明治から戦前まで、国の主要輸出製品だったこともあり、国の保護・管理の元にありました。

ひとつの小売店が、養蚕にかかわることは仕組み的に難しい事情がありました。

それでもいつか、糸からきものづくりに関わりたい
と思っていた泉二さん。

そんな泉二さんにある日こんなお話がきます。

「新しい蚕品種プラチナボーイの商品化をしませんか?」

プラチナボーイについて詳しくはこちら
https://www.motoji.co.jp/challenge/platinumboy/

天然繊維には、絹のほか、木綿、ウール、麻芭蕉布やいろいろな木などありますが、絹が他の天然繊維と大きく違う点のひとつは

繊維が長いことです。

ひとつの繭をほどくと1km以上の細い絹糸になる!だからこそ、絹は次の糸とつなぐ節目も少なくなめらかで薄い生地ができるわけです。

上質な絹糸を作ろうと、日本はもちろん世界中で長く研究開発をしてきました。

その養蚕研究の中で、一番の夢は、オスのお蚕さんの糸だけで布地をつくることでした。

オスは卵を産まない分、メスよりも細く長く品質の良い糸を吐くと昔からわかっていたのだそうです。人海戦術でオスとメスを分けてオスの繭だけで衣装を作った中国の皇帝もいたとか!

オスだけの絹糸をつくるにはどうしたらいいのか?各国で研究されていた中で日本の大沼博士という方が、オスだけで糸をつくるプラチナボーイの開発に成功します。

最高の絹を目指して、オスのお蚕さんだけで糸をつくる技術開発が日本で成功し、これを商品化をしませんか?というお話が来たとき、泉二さんは「やります!」と二つ返事で引き受けたそうです。

不景気だからこそ皆が動く!最高の商品開発の裏側

養蚕業の長年の夢だった、オスのお蚕さんの繭だけで絹糸をつくり、最高品質のきものを作ることは、技術的には可能になり、この品種はプラチナボーイと名付けられました。

ですが、技術的にできることと商品化することは全く別の話。

泉二さんがまずやったことは、養蚕農家さん、製糸会社さん、作家さん…きものの作り手さんにプラチナボーイを使って欲しいとお願いすることでした。

動画レッスンの中でも、養蚕農家の石川さんとのエピソードをお話くださいました。

養蚕農家さんにプラチナボーイを育ててもらうには、温度管理などこれまでと違うことをしてもらわないといけない。そもそも他の品種のお蚕さんと混ざったりでもしたら大変!

みんな、新しいことへのチャレンジは大変なこと。
やりたい思いがあっても二の足を踏む。

泉二さまは一升瓶を持って行って、飲み交わしながら話をして「よしわかった!」「やろう!」となっても、翌朝にはまた話が降り出しに戻る。

その繰り返し。

養蚕農家の石川さんの心を動かしたのは、泉二さんが持って行った一枚のきもの、反物でした。

「石川さんが育ててくれた繭で、こんな美しいきものができましたよ」

それを見た石川さんはその場でボロボロ涙をこぼされたそうです。

養蚕農家の石川さんが、ご自身が育てたお蚕さんの繭できものになったものを見たのはこれが初めてだったから……!

石川さんの感動
泉二さんの情熱

こうして石川さんが、プラチナボーイの養蚕を引き受けてくださりプラチナボーイの商品化が進んだのです。…こうしてものごとは動いていくのですね。

そうやって泉二さんは、仲間を増やしていかれてプラチナボーイで作られた大島紬や結城紬、江戸小紋、色無地…と様々なきものたちがもとじさんのお店に並ぶようになりました。

絹の中でも超最高品質プラチナボーイでできたきものを扱うのは、日本で唯一、銀座もとじさんだけです。

きものを新品で買うと「証紙」という織り方や品質を書いた部分があるのですが、プラチナボーイの証紙には

繭を育ててくれた方

糸にしてくれた方

染めてくれた方

織ってくれた方…

作り手さんのお名前が並びます。

特に養蚕農家さんのお名前が証紙に載ることは今までになかったことでした。

このプラチナボーイのきものは、2015年農林水産大臣賞を受賞します。

泉二さまお一人でも、銀座もとじのお店だけでもなく、作り手のみなさんとの「“絹を未来に”プラチナボーイ研究会」というチームで受賞されました。

このときのことを振り返って、泉二さんはこうおっしゃっていました。

泉二社長

不景気が味方してくれました。うまくいっているときだったらみんな新しいことをやろうとしない。不景気だったから、みんなでチャレンジできたんです

きもの一枚に込められた、物語の大きさ。

日本の美の歴史も、伝統工芸を支えてきた人たちの歴史も軽やかなきもの一枚に全部通っている。

そんな伝統衣装、きものを身に纏えることを私は本当に幸せだなぁと思います。

銀座もとじ 店主 泉二弘明さまのインタビュー。この記事には書ききれなかったお話が動画の中にいっぱい詰まっています。

こちらの動画レッスンプレゼントからお申し込みいただき、ぜひご覧になってくださいね!

>>プレゼントのご応募はこちらから!
https://peraichi.com/landing_pages/view/marketing-startup

泉二さま、この度は素晴らしいお話を誠にありがとうございました!!

和創塾
〜きもので魅せる もうひとりの自分〜
上杉 惠理子