こんにちは。上杉惠理子です。
私、きもののなかでも特に、帯が好きなんです。
しかも、袋帯よりも半幅帯よりも、
名古屋帯が大好き❤︎
豪華お祝い用の袋帯よりも、日常使いができる名古屋帯。気軽で簡単な半幅帯よりも、きちんと感が出る名古屋帯。名古屋帯をきゅっとお太鼓結びにするのがいちばん好き❤︎
母や祖母から譲られたものだけでなく、自分で惚れ込んで買い求めたものもかなりの本数がありまして…改めて数えてみたら名古屋帯だけで20本以上あった!!
そんな、私も大好きな名古屋帯について。この記事では改めてじっくり調べてまとめてみました。お付き合いいただけたら嬉しいです^^
名古屋帯誕生は大正時代
まずそもそも名古屋帯とは、どんな帯かというと幅30cmほど、長さ360cm前後のかための布、もしくは芯を入れてかたくした布です。
名古屋帯共通の定義はこれくらいです。
きものの歴史をさかのぼると、平安時代に十二単のような豪華な衣装の下着として着ていた小袖(こそで)がいまの きものの原型と言われています。
「わざわざ上にいろいろ着なくても、この下着だけで良くない?」
というノリ笑 これがきものの原点です。
その小袖が、正面で左右を打ち合わせて着るものだったので、留めるために紐で縛ったのが帯の原型です。
安土桃山時代の頃は帯というより紐だったようですね^^
庶民が使っていたのは紐でもなく、縄だったのではと言われています。
それが戦乱の世が終わり江戸時代になって、幅が広く装飾性の高い帯が登場します。元禄時代には今と同じくらいの幅になりました。
帯が幅広になることで、大きく変わったことが結び目の位置。正面ではなく、
背中に結び目を持ってくるようになる。
幅広の帯を正面で結ぶと邪魔だ、という機能的な理由もあったと思いますが、背中に結び目を持ってくるのは平和な時代になったからできること。
後ろから掴まれたらあぶないですものね^^
自分では見えない、背中に飾りを持ってくるという美意識が日本ならではと言えます。
ちなみに、帯幅が広くなったことで生まれたのが今でいう訪問着や留袖などの裾の絵が繋がる模様、絵羽模様(えばもよう)です。
帯で隠れちゃうし、上半身の模様は簡単な方がおしゃれじゃない?という感じ。
とはいえ江戸時代は帯の幅も長さも、いろいろあったみたいです。
ドラマ『八重の桜』や映画『みおつくし料理帖』を見ると武家のお嬢さんたちも普段は半幅帯のような細めの帯でしたね。
一方で最も格が高かったのが、江戸中期に誕生した「丸帯」でした。
丸帯は幅60cmほどで織られたものでこれを半分に折って帯にします。仕立て上がった丸帯は表もうらも両面どちらも表。とっても豪華ですし、かなり重い…!!重さも1kgは優に超えます。
自分で結ぶというよりも、人に締めてもらう帯だったのですね。
そして時は流れ大正時代。この丸帯から簡略された帯が登場します。
ひとつが袋帯。
袋帯の定義は、二重太鼓や飾りむすびができる420cm以上の長い礼装用の帯です。
丸帯と違う点は、裏になる面は装飾を入れないこと。
袋帯はその名の通り、靴下のように袋で織っていたのでその名がついています。(袋に織るのも難しそうですけど…)今の袋帯はほとんどが表の布と裏の布を別々で織って両端と縫いとじるものがほとんどです。
そしてもうひとつ、
丸帯を簡略化した、名古屋帯が登場します。
大正デモクラシーの時代、名古屋女学校を創立した越原春子さんが、仕事で忙しい日々にもっと手軽な帯が欲しいとご自身で考案されたのが始まり。
丸帯一本から、二本の名古屋帯が作ることができ、丸帯よりずっと軽いし、締め方も簡単♪
この春子さん自作の帯を名古屋帯と命名したのは、春子さんの学校に出入りをしていた中村呉服店(現名古屋三越)の社員さん。同様の帯をつくり名古屋帯として発売したのが大正13年、1924年のことでした。
折しも大正12年に関東大震災が起こります。
多くの人が家を失い、きものを失ったとき。震災からの復興期に、丸帯に比べて経済的な名古屋帯は一気に全国に広がります。
さらに、戦後の物がなかった時代にも、名古屋帯は人気でした。さまざまな色柄で作られ…今にいたります。
そうなんです。意外と最近なんです、名古屋帯。
誕生から100年、というところでしょうか。
時代の変化とともに生まれた帯であり、これは売れる!と思った名古屋三越の社員さんもすごいなぁと思います^^
お太鼓結びってなんぞや?
さて、この名古屋帯は、お太鼓むすびをするのが一般的です。正確にいうと、
一重太鼓結び(いちじゅうたいこむすび) です。
どういう結び方か図解しますね^^
<背中側>
背中は四角い箱を背負っているようなかたち。上の方に帯枕というのを入れてかたちをつくっています。
<横>
横から見てみると、上部分は帯揚げという布で包まれた帯枕。中央は帯締めで結んで支えています。
私は帯自体を結ばない締め方をするので、お太鼓結びはこの帯枕の紐と帯締めの2本だけで支えられています。
帯を解く時はこの2本の紐をはずすだけで、床にぼとりと落ちます。(あーれーにはなりません。残念ながら笑)
ちなみに、名古屋帯の一重太鼓というのは、このお太鼓になる部分の布が一枚であること。
名古屋帯より60cm以上長い袋帯は、ここが布二枚の二重太鼓になります。「良いことが重なりますように」の願いを込めてお祝い事で締める二重太鼓、というわけ。
<正面>
背中よりも帯の幅が狭いですね^^ 正面は二つ折りにして巻いています。
お太鼓結びの発祥は?
で、このお太鼓結び、江戸時代にはほとんど出てきません。大河ドラマ『八重の桜』でも、明治になって あるタイミングから八重がお太鼓結びをするんですよね。
お太鼓結びの起源を色々と調べてみると…ありました!!
江戸時代後期の文化14年(1817年)、江戸の亀戸天神の太鼓橋の完成記念のお祭りのときのことですが、深川の芸者が帯の後ろの部分を少し持ち上げて、それがずり落ちてこないように紐で留め、胸元に小ぎれをあしらって、しゃなりしゃなりと太鼓橋を渡りました。それが、「太鼓結び」の由来だといわれています。
いわの美術株式会社さんのブログ
https://www.kaitori-kimono.biz/topics/20150816kimono-new.html
なんと!
太鼓むすびの「太鼓」の由来は、亀戸天神の太鼓橋だった!!
(江東区HPよりお借りしました^^)
これは…亀戸天神にお参りに行かねばなりません^^
こうして江戸末期に生まれたお太鼓結びは、その後明治になって女性の帯の結び方として広がったそうな。
…といってもその間に、お太鼓結びを広めた仕掛け人が他に何人かいそうな気がしますが、残念ながら今時点で追える情報はここまででした。
名古屋帯を結ぶといえば、このお太鼓結びが中心です。
私はお太鼓結びがとっても好き♪
背もたれに寄りかかってもかたちは変わらないし、帯枕と帯締めでしっかり結ぶと一日中歩き回っても全く崩れない。
私のように ガサツ…じゃなかったアクティブタイプにはぴったりなんです^^
ちなみにもうひとつ、名古屋帯で<銀座結び>という帯枕を使わない結び方があります。寄りかかれないのだけど、とってもおしゃれです♪
江戸時代には帯の結び方は200種類くらいあったと言われます。
みんな自由に結んでいたし浮世絵を見ていると
「どーやってむすんでるの?」
「…これ落ちないんだろうか…」
と気になるものもある。
名古屋帯の結び方を自由にアレンジするのもアリです^^ ぜひ楽しんでやってみてくださいね♪
あれもこれも名古屋帯 素材編
今、名古屋帯にはいろいろものが出ています。
まずよく言われるのは
染めの名古屋帯 と 織りの名古屋帯
染めは、布にしてから色を塗ったり柄を入れたりする。
織りは、糸を染めてから、布に織りあげる。
例えば。
このサファリ柄の名古屋帯は、染め。布にしてから型で動物や木を描いたもの。
こちらのクローバーの名古屋帯は、織り。いくつかの緑色の糸を用意して、織りながらクローバー柄を出していく。
写真じゃわかりにくいですよね〜^^; 実際に手元の帯をよーく見ていくとどちらかわかってきます。
帯は染めより織りの方が格上で、礼装向き、という考えがあるので袋帯は圧倒的に織りが多いのですね。
でも名古屋帯は、染めも織りもいーっぱいある❤︎
染めの方が、繊細な絵柄が出る。
織りの方が、丈夫でタフな感じ。
…というのがわたしの染めと織りの印象の違いです。
染めか織りか、という違いもあるけれど、刺繍を入れることもあります。
最近の染めの名古屋帯は、型染めとか手描きとか昔ながらの手法だけでなく、絹にインクジェットの機械染めでより細かな柄を描くものもある。
絹ではなく、ポリエステルの名古屋帯もある。木綿の名古屋帯もある。
いろいろ^^
あと注目してほしいのが、染めの名古屋帯に多いのだけど、正面に出る柄が1本で2パターン楽しめるものが増えています。
先ほどのサファリ柄の帯は、私がいつもの巻き方で締めると正面にフラミンゴが出ます。
左右逆に巻くと、ゾウさんが出ます^^
左右逆に巻くのは、右手と左手の使い方が全部逆で、巻き方も時計回りから反時計回りへ逆になりなかなか難しいのですが^^; 2パターンあるというのは嬉しい♪
袋帯ではこの正面2パターン柄はなかなかやらないんですよね。名古屋帯ならでは。
正統派な作家さんやメーカーさんも、名古屋帯は古典柄が多いけれど、名古屋帯だと思い切って遊びゴコロいっぱいの柄でつくってくれることが多くて。
お店に並んでいるときは、背中のお太鼓の柄を見せて飾ってあることが多いのだけど「正面の柄はどんな柄?」と広げて見てみる楽しさが私はものすごく好きです。
素材が変わったり、染め方織り方が違ったり、2柄用意されていたり
そういうことがあって、名古屋帯はデザインも丈夫さも、いろいろあって楽しい♪♪
名古屋帯は懐深い帯なのです^^
あれもこれも名古屋帯 仕立て編
素材も柄も色も、本当にいろいろある名古屋帯。
もうひとつ、仕立て方にもいくつかあります。
▼こちらのように
身体に巻く部分が縫い閉じられているものが名古屋帯、というイメージをお持ちの方もいます。ですが、そうとは限らない。
名古屋帯、仕立て方が大きく3つあります。
写真右から順に…
①開き仕立て
②松葉仕立て
③名古屋仕立て
3本とも名古屋帯なので、幅30cm程度、長さは360-370cmほど。締め方も同じです。
ですが、お仕立ての仕方がちょっとずつ違うんですね。
開き仕立ては、幅30cm程度、長さは360-370cmの帯地 がそのまま開いたままのもの。
この帯を締めるときは片方の先を半分に自分で折りながら、2巻、胴に巻きます。
松葉(まつば)仕立ては基本は、①開き仕立てと同じで、締めるときに二つ折りがしやすいように先だけ縫われているのがポイント♪
帯地によっては自分で折りにくいものもあるので、そういうときに松葉仕立てで先だけでも縫われているととても楽!
名古屋仕立ては、胴に巻く部分が最初から全部二つ折りになって縫われています。「折りながら」巻く必要がないので締めるのは結構楽ですね〜^^
なぜ、名古屋帯のお仕立て方法が違うのかは、さらに詳しくはこちらの記事にまとめています^^
仕立て方が3つもある、というのは、それだけ名古屋帯の布地の柔らかさや柄の入れ方にバリエーションがあるためだと思っています。
この「いろいろあり♪」な名古屋帯が私はやっぱり好きだなぁ〜❤︎
いろいろだから楽しい
この記事を書くにあたり、名古屋帯が大正生まれだとか、お太鼓結びは太鼓橋からきているとか、私も改めて知ることができました^^
ほんっと、きものって変化しているのですね〜
今は、丸帯が消えかけていて、兵児帯は生まれ変わって再登場している感じ。
その中で今、名古屋帯が成熟期を迎え、とても豊かな時代なのだと思う。
私が名古屋帯が好きな理由はいくつかあって。
袋帯のようにフォーマルでなく、半幅帯ほどカジュアルにならない。「普段着」に名古屋帯がぴったりというTPOが私にはちょうど良いこと。
袋帯より軽いし、寄り掛かって崩れる心配もないし着ているときに身体が楽なこと。
背中のお太鼓が立体感があって、デザインも素敵で360度どこから見られても大丈夫、着姿に自信がもてること。
こんなふうに、好きな理由はいろいろあるけれど、やっぱり、名古屋帯で一番好きなところは
私はこれが好き
私はこうありたい
私はこう伝えたいと
メッセージを込められること。
それだけメッセージを込められる、バリエーションが名古屋帯にはあるし、それを伝えられるパワーが名古屋帯にはあると思うの。
名古屋帯は成熟期。
もしかしたら数十年後には、名古屋帯はなくなっちゃうかもしれないけれどそれはそれでいいのかな。
私は名古屋帯が豊かな時代に、これだけ楽しめることがものすごく幸せです❤︎
和創塾 〜きもので魅せる もうひとりの自分〜 主宰 上杉惠理子
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