こんにちは。上杉恵理子です。
突然ですが、きものや帯は何でできているでしょう?
いくつ挙げられますか??ひとつじゃないよー^^
今もきもので一番多いのは、やっぱり絹かな。でも、木綿もウールもあるし。私は夏になると、麻をイチオシ♪きもの用のポリエステルは、もうピンキリで今も進化し続けています。
メジャーなのはそれくらい??
でも他にもまだあります。
それが、自然布の世界。
2021年夏直前に、私の名古屋帯コレクションに自然布の帯をお迎えしました。
科布(しなふ)の帯です。
科布ってどんな布?
科布というのは、科の木(しなのき)の内皮を糸にして織った布のこと。
科の木は九州から北海道まで日本全国に生育し、日本も原産国になっているほど身近な木。生育が早く、高さも10〜20mに育つので、現在は街路樹としてもよく植えられます。
この科の木の内皮を取り出し、乾燥させ、煮て、洗って…といくつもの行程を経て糸にします。
科布の工程がまとまった動画がこちら。
5分ほどでとても素敵にまとまっています^^
手技「羽越しな布」/伝統工芸 青山スクエア
https://www.youtube.com/watch?v=H3yX1xjgk5A
科布の歴史は古く、どれくらい「昔」かというと、平安時代の延喜式に、貢物として「しな布」の記述があるそうです。平安時代には織られていたとわかっていて、古代布とも言われています。
科布と科の糸は全国各地で作られ、衣服、縄、笠、蓑、脚絆など、人々の生活を支えていました。とても丈夫で、漁労の網にも使われていたそうです。海水につけても大丈夫とは、ほんっとにすごい!
ところがここ100年ちょっとで、きものは絹になり木綿も増え、化繊も登場し、科布は一気に姿を消します。
現在、科布をつくっているのはもう新潟と山形の県境の地域のみです。
科布の名古屋帯の魅力
私がこの科布帯の存在を知ったのは、一年ほど前でした。
木の幹から糸を作るってどういうこと??
しかも、籠バッグや縄ならわかるけど、身に纏う帯になるってどういうこと!?
…とガゼン興味を持ちました。
昔は季節問わず使っていたと思いますが、現在の科布帯は夏物扱い。なぜなら、とにかく軽くて、見た目にも涼しそうだから。実際持ってみると、ほんっと、軽い。
最初はかたくてざらつきもあり慣れるまで締めにくいけれど、どんどんなめらかになり、色も変わっていくそうです。
雨に降られてもへっちゃらで、むしろ霧吹きで濡らしてから締めると締めやすい。
糸を染めたり柄を入れたりもしない。木の色そのままで、自然の独特の香りがする。
もう気になって、
気になって、
気になって…!!
今年の5月後半はもう「科布の帯があぁあー」と、会う人会う人みんなに語りまくっておりました笑 あまりに私が語るものだから、それはお迎えしていいんじゃない?とみんなに背中を押してもらい、この先40年は長生きして締め続けるぞ、と決めてお迎えしました。
そうしてやってきた科布帯を初めて締めてみた感想は…
若い!!!
締めながら木の香りがする。新築の木造のお家みたいです。
驚くほど張りがあり、元気すぎて、やんちゃ坊主のようで締めにくかったーーー!!!笑
自然の色がキラキラに美しく見えて…ほんっと若いな、という印象です。
こうして帯になっても、科の木は生きているのだと思う。
これから10年、20年…40年と一緒に年を重ねていきながら、このコがどんな変化をしていくのか、じっくり見守っていきたいと思います。
「好き」は変わるより、広がっていくもの
今回、科布をお迎えして、好みって変わるんだなと思いました。
私、2年ほど前までは科布や芭蕉布など自然布に全くというほど興味がなかったんです。
私が好きだったのはモダンでドレッシーなもの。例えばこちらの、キラキラの紫陽花の帯のように。
今ももちろん大好きなんですよ^^ この紫陽花の帯もほんっと大好き❤︎
キラキラな帯と比べると、科布などの自然布はものすごーーく地味で落ち着いて見えました。素晴らしい手仕事だとは知っていたけれど、自分が着たいとは思わなかった。
今思えば。
起業して3年くらいは、和装イメージコンサルタントとしてどうしたら人に認めてもらえるかばかり考えていました。
正統派なきものを着ていたらおもしろくないし、ふつーの着付けの先生と見られたら仕事にならないと思い込んでいた。
だから、きものにもそんな帯があるんだ!と驚かれるもの、洋服のドレスの人と並んでも華やかなものばかりを見ていたんだと思います。
ここ2年くらい、いろんな思い込みを外してきた結果、
科布の美しさやパワーがドンっと自分に入ってきました。
自生した木の幹の皮から糸をつくる科布
染色もせず、柄も入れず、木の色そのままな科布
驚くほど張りがあって、布になっても生命力あふれる科布
今の私は、この科布の帯がとても美しく見える。
好みが変わったというよりも、「好き」は広がるんだなぁという感覚です。
自分の中で扉が開いた感じです。
「好き」はときどきアイデンティティになります。「私はこれが好きな人」と言えば人にも分かりやすいし、自分で自分を理解するのも易しくなる。だから自分をわかりやすくするために、「好き」をあえて狭く捉えたりする。
そんなアイデンティティを手放すのは勇気がいる。
だけど勇気を持って「好き」を広げると、世界が広がり、自分が解放される感覚になる。
そんな新たな感覚を、科布に教えてもらいました。
次の夢は一緒に里帰りをすること
科布もそうですけれど、きものを着るからこそ知ることができる世界があります。
それは高級で贅を尽くした技術の世界だったり、自然の恵と共に生きた人々の暮らしだったりする。どちらも本当に豊かだなぁと思います。
お仕立てで帯の長さは9尺8寸(371cm)でお願いしました。そしてどんなにわずかでも良いので、端切れもくださいとお願いしました。
この端切れは、これからの和創塾の教材にします♪ みんなにも科布の香りをクンクンしてもらうんだ♪
そしてこの帯を締めて、つくってくださった新潟県 さんぽく生業の里を尋ねることが次の夢になりました。
その日を楽しみにたくさん締めて、この帯とたくさんの時間を過ごしたいと思います。
和創塾 〜きもので魅せる もうひとりの自分〜 主宰
上杉惠理子
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