こんにちは。上杉惠理子です。
前回のブログ記事では、ラオスで自然なかたちの「命の養蚕」を実現された山本コージさんとの出会いを書きました。
この記事の中で、プラチナボーイというお蚕さんの品種のお話も少し書きました。
私がお迎えしたプラチナボーイの大島紬と共に、今回はこのお蚕さんのお話をお届けします。
品質で世界と勝負する プラチナボーイの誕生
『教養としての着物』にも書きましたが
着物の多くは絹で作られ、絹糸はお蚕さんの繭をほどいてつくられます。
日本では米作と同じくらい養蚕の歴史は長く、全国各地に絹織物の産地があります。そして、戦前の日本で最大の輸出品は、お蚕さんの繭から糸を引いた絹糸の元「生糸」でした。日本が世界一の生糸輸出国だった時代もあるのです。
ですが戦後、日本の養蚕農家は激減します。
化学繊維の普及や着物需要の減少により絹への需要が減ったこと。さらに、中国、ブラジル、インドなど広い土地を持つ国が絹の生産地になり、価格でも日本は負けてしまう。
現在、日本の絹の自給率は2%を切ったと言われています。
そんな中、日本の養蚕が唯一残る道は、高品質なものをつくり、品質で勝負するしかないと考えられていました。
それで進められてきたのが、雄のお蚕さんだけで絹布をつくる研究です。
卵を産まない雄の繭は、雌よりも細く長い糸を吐くと昔から知られていて、どうしたら雄の繭だけで絹布が作れるか、長年研究されてきました。
それを日本の研究者 大沼博士が雄の卵だけが孵化する研究を成功させ、銀座もとじの泉二会長がその商品化に尽力されました。
雄のお蚕さんだけ孵化させて絹布をつくれる品種、それがプラチナボーイです。
ただし、研究開発が成功することと、商品化することは全く別の話!
いつか、きものの素材開発から携わりたいと想いを持っていた泉二さんが、養蚕農家さん、製糸工場さん、作家さん…と皆さんを説得し、チームで商品化を成し遂げました。
こちらに泉二さんへのインタビューをまとめています。
ですが、雄の卵だけ孵化するということは、簡単に言ってしまうと遺伝子操作です。賛否両論はあるかと思います。雌の卵は…??という疑問も残ります。
養蚕農家さんにもスポットライトを当てる取り組み
わたしがお迎えしたプラチナボーイの着物はこちら。
▼柄を拡大▼
織り機の杼(ひ)をもとにデザインされた、銀座もとじさんオリジナルです。
『教養としての着物』の出版のお祝いに、泉二会長が大幅割引をしてくださって(さすがにプレゼントではない笑)お迎えしたコです。
この着物、証紙が特徴的なのです。
まず片面には通常の大島紬の証紙。
地球儀の大島紬は、奄美大島の大島紬である証。
古代染色、泥染を示すシールも付いています。
左側には織ってくださった方のお名前もわかります^^
そして裏返すと…
プラチナボーイ専用の証紙です。
右から
プラチナボーイを研究開発した大沼昭夫博士
この着物のお蚕さんを育ててくれた 養蚕農家 谷田部剋詮さん
谷田部さんの元で育てられた繭を糸にしてくれた 碓氷製糸さん
奄美大島で何人もの職人さんと着物にしてくれた織元 前田紬工芸さん
そして、銀座もとじさん。
着物は誰が染めたか/誰が織ったか、注目されがちで、、
養蚕農家さんや製糸会社さんのお名前が、こうして表に出ることは、これまで無かったそうです。
ですがお蚕さんの繭がなければ、着物はできない。
プラチナボーイは、今ではとても貴重な、完全国産の絹糸です。
そして、こうして養蚕農家さんのお名前も外に出すことで、ものすごく減ってしまった日本の養蚕業を支えようとする取り組みでもあるのです。
プラチナボーイ、着てみると??
実際に着ている感想は、泥染の大島紬で、ほんと軽くて丈夫で…
でも正直に言うと、個人的には他の泥染大島とどう違うか、まだよくわからないのが本音です笑
だって、通常の泥染大島もものすごーく軽くて丈夫で最高なのだもの♪
ですが、織元の前田紬工芸の前田社長に「プラチナボーイの糸って他のと違いますか?」とお聞きしたら
「違う」
と即答されました。
そうなんだ!!!
また、『サイエンス・スピリチュアルの教科書』の著者で私たちの神様小西さまは
「この着物、すごく良いですね」
と、このプラチナボーイの着物には、いつもおっしゃるのです。
… やっぱり何か違うんだろうなと感じています^^
まだお迎えして数ヶ月ですが、これから長く着ていくと違いに気づけるのではと思います。
また、今年2023年10月に銀座もとじさんが、奄美大島へ行く大島紬の里帰りツアーを企画してくださって、わたしもご一緒する予定でいます。
奄美大島ご出身の泉二会長が、島内をいろいろとご案内くださるそう^^
そのツアーではこの着物を着て行って、織り手さんや染め職人さんや奄美大島の皆様にお見せできたらいいなと思っています。
また、大沼博士は今、プラチナボーイの雌の卵のその後を研究されているそうです。その点もずっと注目していきたいと思っています。
ラオスで自然なかたちの、命の養蚕を実現させていらっしゃる山本コージさんとのご縁。
そして、銀座もとじさんで出会った最高品質を目指して産み出されたプラチナボーイとの出会い。
ある意味 両極端で、ある意味 近い世界観を追求されている気がするのですが、わたしの着物との関わりを深めてくださる存在です。
ありがとうございます。
きものを選ぶ基準にはいろいろなポイントがあります。
色柄のデザインで選ぶ
着たいTPOや季節で選ぶ
好きな作家さんの作品やブランドから選ぶ …などなど
その中で、その着物の素材である糸に注目して選ぶ、ということもご提案したいし、そのための情報発信も続けていきたい。
それではまた。
和創塾〜きもので魅せる もうひとりの自分〜主宰
上杉惠理子