きものができるまで

日本の豊かさを再確認する/中川政七商店主催 大日本市2023に行ってきました

こんにちは。上杉惠理子です。

この記事では、2023年9月5〜7日の3日間、恵比寿で開催された展示会 大日本市2023で私が出会った素敵な商品と作り手さんたちのお話をお届けします。

大日本市とは?

中川政七商店をご存知でしょうか?

もともと奈良晒の商いをスタートに300年の歴史を持つ企業で、現在は「日本の工芸を元気にする!」をビジョンに掲げ、現代の暮らしに合う工芸雑貨を広く扱っていらっしゃいます。

そのアイテムには着物にも合うバッグや小物もいっぱい♪お店を見ているだけでも楽しい、素敵な会社さんです。

それに加え、全国の工芸産地やその企業にコンサルティング支援もされています。

この大日本市は、中川政七商店が主催する全国のものづくりメーカー・ブランドが集う展示会です。

テーマは「語りたくなるものづくり」

作り手の想いや歴史、それが生まれた土地の風土など、たくさんのストーリーがある企業・ブランド72社が出展しています。

展示会なので、ものづくりに関わる人、小売のバイヤーさん、メディア関係者など向け。一般消費者向けではないのですが、「着物関係の本を書いています!」と言って「メディア関係者」枠で参加させていただきました。

着物や和文化に関わりのあるものとたくさん出会えたので、ゆっくりお届けします^^

CHIMJUN ー沖縄発のヘアケア用品

私がこの大日本市を知ったきっかけは、著者仲間で着物仲間である 岡城良太さんが、こちらに新しいヘアケア商品を携えて出展すると聞いたこと。

会場に着くと岡城さん(以下、おかちゃんw)にすぐに会えました♪

岡城さんは昨年、沖縄で喜如嘉の芭蕉布を見に行ったときに、赤のオープンカーでアッシーしてくれた人です笑

沖縄の布を感じる旅/芭蕉布の故郷と首里染織館suikaraを訪ねて こんにちは。上杉惠理子です。 2022年5月のGW明け、沖縄に行ってきました。 初日は東京からの移動だったので、単...

おかちゃん自身がもともと美容師さんで、大好きな沖縄に移住して美容室を経営するようになった人。

サロンに行った日の髪はもちろん綺麗だけど、自宅ではなかなか再現できないお客さんのお悩み。

そして、美容師さんの子どもがアトピーを持つ子が多いなど、美容師さんが触れるサロンの薬剤の問題。

おかちゃんはこの矛盾をずっと考え続けてきた人。

サロンに通うお客様も、美容師さんたちも、今日も明日もずっと続く健やかな美しさを実現するヘアケア用品の開発はずっと目標で、それを叶えたのがこのCHIMJUN。

CHIMJUN ブランドサイト
https://chimjun.jp/

リリースしたばかりのCHIMJUNのシャンプー&トリートメントについて、熱く語ってくれました♪

CHIMJUNの名前は、「心」「心情」を意味する沖縄の言葉「ちむ」に、「矛盾」をくっつけたもの。矛盾を乗り越えたいという熱い心がカタチになったものなのですね。

香りもすごく良くて、沖縄で採れたシークワーサーの実そのものを仕入れて、自社で精油にして使っているそう。自分たちで精製するのと、精製されたものを仕入れるのではコストが全然違うんですって!!

売上の一部は、沖縄の海の珊瑚を守り育てる活動に寄付するとのこと。

沖縄で仕事をしていて、沖縄の素材も使っているから、沖縄にもちゃんと還元したいんだと、ずっと熱く語ってくれました^^ 

オリジナル商品をつくるのもすごいし、そこからの広がりも大きく… やっぱりすごいな、おかちゃん!

シャンプーとトリートメントのセットをいただいてしまった!!

使ってみるのが楽しみです♪

オンラインショップで個人でも買えますが、特に全国の美容室サロンのオーナーさんや宿泊施設の方に試していただき、それぞれのお店や施設で使ってほしいとのこと^^ ぜひお試しくださいね!

cocoo ー 京都の匠と漆を再評価する

大日本市では着物ともつながる、とても大事な学びもたくさんいただきました。そのひとつがcocooさんです。

「小さく豊かに暮らす」という言葉を掲げ、今は漆の匠と一緒に、漆の再評価をし、新たな生活雑貨として提案されています。

漆というと、木の器に塗った高級食器を思い出します。黒や赤の艶のある漆器やお膳はお祝い用として使われていたかと。

実は漆の歴史は古く、縄文土器の時代から水漏れ防止のために使われてきたそうです。

着物では、江戸小紋などの型染めの型として、伊勢型紙が使われます。

伊勢型紙は、和紙を3〜4枚重ねたものを、刀で文様を彫っていきます。このとき和紙を貼り合わせ、強度を増すために柿渋を使うと聞いていました。

実は、柿渋だけでなく、漆も使われていたそうです。

漆は一度かたまると溶かす溶剤がないほど丈夫!何度も布を染める型紙にはぴったりなのですね〜

現代のコーティング剤としてフッ素加工などがありますが、石油由来ですし、使ううちにハゲたら直すのは難しく、その商品素ものが廃棄になる。

漆を塗るだけで強度が増し、多くの液体に対応し、抗菌性もある。そして、漆を塗り直すことで長く長く使い続けることができます。

また、漆は木に塗るイメージでしたが、紙にも塗れるし、現代ならステンレスにも塗れる天然のコーティング剤。

漆は、耐久性など機能的で、天然由来で、何度も修復できる。この漆を再評価し次世代に継承したいと、cocooさんは職人さんたちと一緒にものづくりをされているとのこと。

…おもしろーい!!!!!

漆ってすごいんだーーー!!!!

そんな漆の機能を活かした商品を見せてくださいました。

それがこちらの「浮漆/ふわ」のカップ。

これ、紙でできたカップに、漆を塗ったもの!!

軽いっ!!そして丈夫!!

漆を塗ることで、熱いお茶も入れられて、長く使い続けられるカップになるそう^^ 

日本での漆は前述した通り、縄文時代から歴史がありますが、近年は中国産の輸入に押され国産は5〜8%程度に落ち込んでいるとのこと。

国産のほとんどが岩手、茨城、栃木の3県でしたが、最近 京都北部で漆の木を育てているそうです。

京都の漆が育って、漆を採れるようになれば、国産漆は10%を越えるかもしれない、とおっしゃっていました。

漆… すごいな…!!!

器以外にも、アイデア次第でいろいろ使えるんでしょうね〜〜

musubi ー江戸から続く和晒をファッションに

続きましては、角野晒染株式会社さんの和晒のお洋服ブランド musubi。

「サラシを胸に巻く」とか言いますけど、その晒(さらし)とは何でしょうか?

木綿は天然繊維なので、そのまま布にすると不純物が残り、色も真っ白ではなくクリーム色のようになります。

この生成りの木綿布を、真っ白に漂白し不純物を除いたものを晒と言います。

機械化された洋晒は40分ほどで一気に漂白するところ

日本では江戸時代から30時間程かけてゆっくり釜で炊く技法があり、これを和晒と言います。

やわらかい風合いの和晒は、赤ちゃんのおしめや寝具に使われ、そして浴衣や手ぬぐいに欠かせないもの。新ブランド musubiは和晒の柔らかな布を普段着のファッションで楽しむ提案をされています。

大阪の堺がこの和晒の産地。和晒は堺の伝統産業品で、こちらの角野さんを含め堺の7軒の会社さんで日本の和晒の9割をつくっているんですって! 愛用の手ぬぐいや浴衣の生地が、こうした会社さんのお力があるんだなぁとしみじみ。

「今年のお年賀の残りですみませんが…」とこっそり、手ぬぐいもいただいてしまいました^^ ありがとうございました!

sufuto ーお祝いシーンを彩る綴織

綴織の清原織物さんの「祝いの品々」ブランド sufutoのブースにも伺いました。

着物の帯に、綴(つづれ)織りの帯があります。

名古屋帯と同じ長さで一重太鼓に締めますが、金銀入った綴帯は格式が高く袋帯と同格、フォーマルシーンで使える帯です。繊細な色合いと軽くて締めやすいのが特徴で、私も母の綴帯を愛用しています❤︎ 

この綴という織物は世界では4000年、日本でも1000年以上の歴史があり、帯だけでなく、祭事の幕や劇場の緞帳、仏壇の打敷など特別な場を彩る布として選ばれてきました。

滋賀を拠点とする 清原織物さんは、伝承で室町時代創業という綴織の超・老舗!!

帯や緞帳などを織る昔からの仕事も続けながら、 sufutoのブランドを立ち上げ、お祝いの贈り物に合う帛紗や名刺入れなど小物も作り始めたそうです。なお、sufutoは「寿布(すふ)と」の意味^^

「綴は縦糸が見えない」「綴の帯は締めたら緩まない」と言われるのですが、それがどういうことか、綴と通常の平織との違いをこんなパネルで紹介くださいました。

写真の上が通常の平織、下が綴織

わかりやすーーーい!!!

綴は絶妙な隙間をつくり縦糸を包むので、縦糸が見えないのですね!そして僅かな隙間がつくる立体感のおかげで、帯を締めて布を重ねたときに摩擦が起きて滑らない…!!!

奥深い織りの世界… やっと何かわかった気がします。いろいろと教えてくださりありがとうございました!!!

ANDWOOL ー国産羊毛復活プロジェクト

ニットアイテムのブランドさんも複数出展されていましたが、私が注目したのが、昔ながらの手編み機でつくるANDWOOLさんです。


静岡県島田市の茶畑に囲まれた場所にアトリエを持つ、ニット工房さんです。こちらのカシミヤストールの柔らかさにうっとりでした❤︎

すごくおもしろかったのが、国産羊毛復活プロジェクトをされていること!!

ウールは海外からの輸入品だと私思っていたのですが、日本では20〜30年前まで国産のウールが市場に出回っていたそうです。

今では国産ウール糸は市場から消えてしまいましたが、とはいえ、日本国内にも羊さんはいて(牧場とか)その子たちの毛を刈り取ると原毛はある。これらを使って国産羊毛を復活させよう!と有志で活動を始めたとの子。

国内にいる羊さんの毛から、ウールの糸にするまでの工程で一番大変なのは何だと思います??

なんと、洗うことなんですって!!!!

羊の毛を洗って余分な脂や汚れなどを取る工程が必須ですが、水処理設備がきちんとしていないと水質汚染になってしまいます。今では羊毛を洗える設備があるのは日本に一箇所なのだとか。

そうして復活した国産羊毛は、かためでしっかり!セーターとして着るのも良いけれど、ラグマットやバッグなどを提案されています。

日本に国産ウールがあったことも、洗う工程が大事なことも、勉強になりました!!

Earth∞You ーワイン畑から生まれたエシカル乳液

エシカルな美容乳液をつくっている

Earth∞You(アースアンドユー)
https://www.instagram.com/earth8you/

手触りにこだわるご夫妻でつくられたブランドで、旦那さまが丁寧にお話してくださいました^^

どこがエシカルかというと一番のポイントは、長野県上田市のワイン用ぶどう畑で、これまでは焼却処分されていた葡萄の蔓や葉を使っているアップサイクル商品であること

ぶどうには美容成分「レスベラトロール」が含まれていて、実よりも蔓や葉の方が、この「レスベラトロール」がたくさん入っているんですって!特別な技術で蔓や葉から成分を抽出し、お肌すべすべになる乳液ができあがったそう^^

サンプルもいただきまして、白ワインのような優しいスッキリとした香りもとってもよかったです^^ 買って使ってみようかな〜

ひなたのほしものがたり ー宮崎の食材を世界へ

そして、宮崎県の素材で乾燥食品を作っていら ひなたのほしものがたり!

ひなたのほしものがたり
https://www.foodmark.co.jp/hoshimonogatari/

ひなたのほしものがたりのアイテムは書店 有隣堂さんでも扱っていらして、私も大好きなyoutube 「有隣堂しか知らない世界」で何度も登場しているのです!

書店で買える「うまい干し物」の世界 
~有隣堂しか知らない世界016~
https://youtu.be/t721gfmxBEM?si=zq32a3Swdofv07VX

「ゆうせか(有隣堂しか知らない世界の略称)見てます!大好きです!」とお声がけしたら喜んでくださいました^^ 

MCブッコローちゃんが「冷蔵庫の下から出てきたたくわんですね」と酷評した笑 ドライたくわんも試食させていただきました^^ 思っていた以上においしかったですよ❤︎

代表の広本さん!!お会いできてうれしかったです!!

日本は資源大国だったのか…!

他にもほんっと魅力的なものづくりをされているブースばかりで… お話を聞いて回るのがめちゃくちゃ楽しかったです!

漆、絹物、ぶどうの蔓、海産物、農産物…

日本には資源がないと良く言われますけど、それは石油や天然ガスや一部のものに過ぎないのではないでしょうか。

こうしたものづくりのお話を聞くと、本当は日本は資源に恵まれた土地なのではと思います。

豊かな素材があるからこそ、全国各地にこれだけ素晴らしい工芸が生まれたのではないでしょうか。

ないものに囚われず、既にある豊かさを大事にしていきたいと改めて思います。

たくさんお土産をいただいてしまいました… 感謝❤︎

本当に、日本には素敵な会社さんや商品がいっぱいありますね!!こういうお話をたくさん聞けて、そしてこうしてご紹介できて、上杉はめっちゃ幸せです❤︎

素敵なご縁をありがとうございました!

上杉惠理子


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