きものを着こなす

志村ふくみ 生誕100年記念展に行ってきました

こんにちは。上杉恵理子です。

先日2024年11月10日日曜日。広島出張の帰りに、滋賀県に行ってきました。

新幹線を京都駅で降りて、JRで大津市の瀬田駅へ。ここからバスに乗って向かうは、滋賀県立美術館。

こちらで11月17日まで開催されている、紬織の人間国宝、志村ふくみさんの100歳記念展を見てきました。

志村先生は30歳の頃、お子さんを抱えて離婚したことを機に、ご自身の生業として織物を選択。

ご苦労をされながらも日本工芸展などに出展したりして、その道を極めていかれました。66歳のときに、国の重要無形文化財「紬織」保持者、いわゆる人間国宝に認定。

藍、桜、梅、紅花、梔子、刈安、茜、蘇芳… 草木から絹糸を染めて着物を織り、後進の育成にも尽力されています。

草木染めや織物の技術が素晴らしいのはもちろんのこと、志村先生は「色とは何か」「織物とは何か」など文学や哲学とも近いところで、エッセイ集などたくさんのご著書も出されています。

私には、着物の職人というよりも、手を動かす思想家。

その思想は、染織の世界にとどまらない、命の理のように感じるんです。

ある人が、こういう色を染めたいと思って、この草木とこの草木をかけ合わせてみたが、その色にならなかった、本にかいてあるとおりにしたのに、という。

私は順序が逆だと思う。草木がすでに抱いている色を私たちはいただくのであるから。

どんな色が出るか、それは草木まかせである。ただ、私たちは草木のもっている色をできるだけ損なわずにこちら側に宿すのである。

色をいただく『色を奏でる』志村ふくみ

私自身はもちろん志村先生の着物を着たことはありませんが(今売ってるのかな、、?)ご著書は3冊ほど持っています。

今年9月に100歳になられた記念に、今回の展覧会が開かれていて、これはぜひ見に行きたいと思ったのでした^^

今回、展示された着物の数は、ずらりと80点。

その中には、まだ有名でない初期の頃、見初めて何点も購入された方が、後に滋賀県立美術館に寄贈したものや、もしかしたら今も着ているのかしら?という 個人所有のものも多く並んでいました。

平坦な四角い布でできている着物は、大きな絵を描ける「絵画を纏う衣装」だと私も常々申し上げておりますが

志村先生の作品は、抽象画なのです。

本当に、絵画を見ているよう。

庶民の日常着だった紬の着物を、その日常着としての良さを残しつつ、芸術としての価値を伝えてこられた方です。

布になる前の、グラデーションに染めた絹糸も見ることができました。

丁寧に草木で染められた絹糸は輝いていました。美しい…!

私はその芸術性を理解できたかというとまだまだ、未だ未だ、マダマダですが…このあと私の人生を振り返って、2024年に滋賀まで行って、この展覧会を見たことはかなり大事なことになると感じています。

志村先生は今年100歳。着物の作り手の方って、ご長寿な方が多いなぁ。

なんでだろうなぁと思っていたら、志村先生が染織の仕事について書いていた言葉が、あらゆる仕事に通じるものだったのでご紹介させてください。

長く仕事をしてきて、一度もこの仕事を放り出したいと思ったことがなく、片時も仕事のことは離れず、やればやるほど興味が湧き、次々と新しい発見があった。それが自然との深いつながりだからと気付いたのは大分経ってからだった。これは織の場合だけではなく、あらゆる仕事の元はそこに在ると思う。

もし自然に反する仕事を続けていたら体を壊すか、精神的にも行き詰まるだろう

織るということ『伝書』志村ふくみ

着物そのものからはもちろん、着物の世界に関わる方々から、かけがえのない学びをいただいています。

なかなか素晴らしさを伝えきれないけれど… 滋賀での志村ふくみ先生100歳記念レポでした^^ 

和創塾〜きもので魅せる もうひとりの自分〜主宰
上杉惠理子