きものができるまで

ピンからキリまできもの値段の謎を紐解く 〜価格から見えるもの〜

こんにちは!

和創塾 〜きもので魅せる もうひとりの自分〜 主宰 上杉惠理子です。


先日、和創塾 生徒さんたちとショップツアーで浅草にて♪

今回はきものの値段をテーマにお届けします。

キッカケは私の和創塾の生徒さんから届いた、こんな質問でした。

生徒さん

えりこさーん、素朴な質問です!新品の、絹の帯と言っても何十万円もするものから、1〜2万円くらいで買えちゃうものまであるんですね。帯といっても、なんでこんなに値段が違うんですか?

ピンからキリまで値段に幅がある、きものの世界。

きものビギナーさんが、パッと見るだけではなんでこんなに違うのか、疑問に思うのは当然です。

きものや帯の値段が変わるポイントは大きく、

1. 素材の違い

2. 作り方の違い

3. 流通での違い

と3つに分けられます。

順番にお伝えしていきますね!

何でできているのか?価格に直結する ”素材”の違い

まず、そのきものや帯が何で作られているのか

1.原料の違い 

をまとめてみます。

1)素材、が違う

きものの素材、というと何を思い浮かべますか?

多いものは、絹。

ですが、お値段手頃で、お手入れもしやすいようポリエステルのきものや帯も今、たくさん出ています。

木綿やウール、麻も絹よりはずっと安くなります。

まずは素材が絹か絹以外かできものの値段は大きく変わりますね。

2)糸の産地、が違う

きものや帯の素材で一番使われるの高級素材、絹。

学校の歴史の授業で習った方も多いかと思いますが、日本では明治・大正時代まで絹糸(生糸)が主力の輸出製品でした。

そんなに作っていたのですね。

ですが今、日本で流通する絹のうち日本国産の糸が占める割合がどれくらいかご存知でしょうか?和服も洋服も含めてですよ。

…1〜2%程度だそうです。

たったの。

今、絹の産地は中国とブラジルがほとんどなんですね。

きものや帯を手にとって、糸の産地が表記がされていなければ絹糸はまず外国産です。

日本の国産糸を使っている場合、ブランドになるの必ず表記がされ、値段が高くなります。

「日本の絹」というマークがありますが、「純国産」と書いているものが蚕を育てる繭の生産から日本で行われたもの、「純国産」と買いていなければ外国で育てられた繭を日本で糸にしたという意味になります。

「完全国産の絹糸」は本当に貴重なのですね。

3)糸のつくり方、が違う

絹糸はお蚕さんの繭から糸を引き出します。

繭から糸にするとき、これが機械なのか、それとも昔ながらの手仕事なのかこれでも値段は大きく変わります。

結城紬という有名なきものの織物があります。
茨城県・栃木県あたりが産地ですっきりした着姿になるのに、ふわふわな素材感で暖かいきものです。

結城紬は重要無形文化財指定がされていて、その指定どおりに作られた「本場」結城紬は糸は機械ではなく、で紡ぎます。繭をざっくり手で広げて、均一な太さで糸を手で紡いでいくんです。

…えぇ、すごい時間と手間です。

ですが、機械では決して出せない風合いになるのだそうです。

こうして手仕事で紡いだ糸で織られたらもちろん価格は上がります。

▼結城紬についてはこちらの記事もどうぞ!

人類の織物の原点/結城紬の糸・機織り・染め方・選び方 こんにちは。上杉惠理子です。 結城紬をご存知でしょうか。 鬼怒川を挟み、茨城県結城市と栃木県小山市をまたがる一帯でつくられ...

ちょっと余談になりますが麻も最高級と言われるものは手で糸を作ります。

宮古上布とか、能登上布とか。

絹の糸を手でつくるときは糸を「紡ぐ」と言いますが、麻の糸を手でつくるときは糸を「績(う)む」と言うんですよ^^

4)絹糸以外の素材、が違う

きものや帯をつくるとき、絹糸だけでないときがありますね。

例えば金糸・銀糸

ポリエステルや綿糸にフィルムコーティングをして金糸、銀糸を作ることもできます。

本当に金を貼った金糸もあり、とんでもない金額になります。

普通はフィルムを貼り、銀を貼り、黄色で塗って…という金糸が多いそうです。

他にもきものや帯の装飾で使うものとして螺鈿(らでん)とか。いろいろ使いますね。

螺鈿は奈良時代に日本に伝わったという貝殻の内側を器や家具に貼って飾る技法。

帯に貼って飾るとキラキラとってもキレイです。

貝殻を使って伝統技法で作られた本物の螺鈿なのか、螺鈿風な飾りなのかでこれまた値段が変わりますね。

5)染料、が違う

糸や布地を染める染料が自然由来か、それとも化学染料か。

この染料も価格に大きな違いを生みます。

自然由来のものといえば
草木染め
泥染め
白泥染め などなど。

草木染めといえば紅花、桜、蘇芳、ウコン…

色素が出る時期に植物を採取し煮出し、糸を漬けて染めます。

自然染料の草木染めは一回で染まることは稀で何度も染めないと色がつかないものが多く、しかもいつも同じ色が出るとは限りません。

日本人にとってなじみ深い藍染めは全て天然素材で行う染色方法に天然藍灰汁発酵建(てんねんあいあくはっこうだて)があります。

天然藍灰汁発酵建は江戸時代から日本で始まった手法で、藍の色素を含む植物を約1年かけて乾燥・発酵させて蒅(すくも)にし、甕の中で蒅と灰汁と混ぜてさらに発酵させた状態で染めます。

藍染めは化学染料でも「正藍」と呼んでしまうことがあるそうでとってもわかりにくいのだとか。

天然藍灰汁発酵建で染めたものであればしっかり表記があるはずで値段もぐっと上がります^^

特に「**染め」と記載がなければ、まず化学染料です。

化学染料は自然由来の染料に比べてもちろん値段は安くなります。

簡単に染まるし、色味も安定します。

ですが、化学染料は水質汚染の問題が常にあり人によっては肌についた時にアレルギーを起こす方もいます。

きものの世界では自然由来の草木染めにこだわる職人さんや作家さんがまだまだいらっしゃる世界です。

…と、まずはきものや帯の「原料」について値段が違ってくるポイントをまとめてみました。

きもの、帯、と言ってもそんな違いがあるのかー
このきものや帯はそんなところにこだわっているのかー
…と感じていただけたら嬉しいです。

「きものの値段は手間賃」…!?”製造工程” が値段にどう反映されるのか

続きましてどうやって作られているのか

2. 作り方の違い

をまとめてみます。

1)染め方、が違う

を染めるとき、やを染めるときの染め方が手作業か、機械かということですね。

平面な布でできているきものだからこそ、絵画のように手描きで絵を描くこともできます。

型を置いて染め抜く型染めも13mの反物を均一に染め上げるためには熟練の技が必要です。

浴衣の反物も良いものは裏表どちらも染めてぴったり表裏、柄が揃っていて染めの技術は本当にすごいなぁと思います。

最近は機械プリントのインクジェットのきものや帯もたくさん出ています。

コストが安いということだけでなく細かい柄が出せるんですね。インクジェットだからできる表現ということもあります。

といっても、機械で染めたものの方がお値段としては安くなりますね。

2)織り方、が違う

糸から布にするとき織りこさんがトントンと機(はた)を織る様子をきもの産地ではまだ見ることができます。

機械で織ることと手で織ること。

どちらが値段が高くなるか…言うまでもなく手仕事です。

「きものの値段は手間賃だ」という方もいらっしゃるほど、着物の価格が高くなるのはシンプルに手がかかっているからということでもあります。

3)ブランド力、が違う

どうつくるか、だけでなく誰がつくるか、も付加価値になります。

人間国宝という素晴らしい技術を持つ職人さんがつくられたものは付加価値がつきます。

人間国宝、までいかなくても人気のある個人の作家さんのきものや帯は値段が上がっていきます。

4)ロット数、が違う

機械製品は同じものをたくさん作るほど一点あたりの単価は安くなりますよね。

同じデザインで何点作るかロット数も価格を左右します。

ユニクロは1デザイン50万点ロットだそうです。
…桁が違う!!!
安さの秘密はそこにもあるんですね。

きもの関係はロット数がものすごく小さいんです。

手で染めて、手で織って…という手仕事のきものや帯はもう一点もの、の域ですね。

浅草はんなりさん、きもの英さんなど、オリジナルデザインの染め帯や染めの着物をつくるところでは、同じデザイン同じ色は二つとしてつくらないそうです。

「せっかくの着物のおしゃれなのに人と被りたくないでしょう?」と社長さん達がおっしゃっていました。

その中でも機械織りの帯は比較的、量産されやすい。

ものすごく安い帯は同じデザインでロット数多く作られている可能性があります。

それでも…同じデザインの帯を1万ロットなんて絶対に作っていないので洋服とは大きく違いますね^^

一物二価…どころじゃない。きものの値段を変える”流通”の事情

きもの関係では全く同じものでもお店によって値段が違う一物二価どころか、一物十価も起こりえます。

その理由は流通での違いにあります。

1)間に入る会社数、が違う

きものは作り手さんがいて、間に問屋さんが入って、小売に並び、消費者が手にするというのが基本の流通でした。

間に入る業者・会社が増えるほど値段が高くなるのはどの業界も共通のこと。

ですが、きもの関係の場合、間に入る問屋さんの数も多く、かなりの金額が上乗せされてきました。

生産地が10万円代で出した物が消費者の購入価格で100万円になる
…ということが本当に起こっていたんですね。

それくらい昔は流通させることが大変だったということもありますが、今はもうネットも宅急便もあるし流通の状況は大きく変わっています。

最近増えているのが…

問屋さんを挟まず作り手さんが小売のお店に直接売り込みにいくケースや小売のお店が作り手さんに直接「うちであつかわせて欲しい」と頼むケース
(銀座もとじさんなど)

作り手のメーカーが直営店を持つケース
(六本木のOKANOさんなど)

問屋さんが商品開発をし直営店を経営し販売をするケース
(浅草のはんなりさんなど。リサイクル大手たんす屋さんももともと問屋さん)

小売店が作り手のメーカーと商品を共同開発するケース
(これは結構多い)

…という間を挟まず流通を効率化することで価格が下がっていく傾向にあります。

2)在庫リスクを持つところ、が違う

物販では必ずどこかが商品を在庫として抱え在庫リスクを背負います。

きものは、書籍と似ているところがあって委託販売のシステムがあるんです。

書籍は出版社が本を作り取次と言う問屋さんが在庫を持ち、小売の本屋さんに配本します。

街の本屋さんは本を買い取って仕入れるのではないんです。なので街の本屋さんは売れなかった本を取次さんに返却できる。

売れ残り在庫の負担は本屋さんではなく、取次さんが持つ仕組みです。

だからこそ街の本屋さんではいつも新刊が並びどんどん本が入れ替わるんですね。

同じような委託販売がきものの世界にもあります。

問屋さんから小売さんにきものや帯を貸し出し、売れなかったら小売さんは問屋さんに返品できるんですね。

この委託販売システムによって、資金力が小さい小売さんでもお客様にたくさんのものを紹介できるメリットもあります。

ただし、きものと書籍の一番の違いは最終販売価格

書籍は最終販売価格が作り手である出版社が決め本の裏に値段を明記します。どこのお店に行っても新品であれば書籍の値段は一緒です。

だけど、きものの場合、最終販売価格が決まっていない。

問屋さんは小売が買い取り仕入れをしてくれるなら比較的安く卸せるけれど、返品されるかもしれない委託販売なら仕入れ価格を上げることを行うんですね。

そしてその仕入れ値の違いはもちろん消費者の購入価格に反映されます。

全く同じきものや帯だったとしてもお店によって変わることが起こるわけです。

3)作られた時期、が違う

書籍は出版年月日が記載されていますが

きものにいつ作られたか製造年月日の記載はありません。

中古ではなく新品だけどびっくりするくらい安く売られているというとき、実は何年も前に作られたものということがあります。

理由は問屋さんや小売さんの在庫で眠っていた、とか

問屋さんとかが倒産してしまって少しでも現金化するために破格で在庫の商品が売り出された、とか。

「新作です!」とは積極的に表記しますが「10年前のものです」とはわざわざ表記しません。

しかも、新しいから良いものとは限らないこともきものの特徴なんですよね。

4)仕立て代など、その他の費用が違う

きもの産地で作られた反物や帯地の値段が一緒だったとしても、お仕立て代やガード加工代などそのあとに必要になるコストで、最終価格が変わってきます。

お仕立て代も小売店によって違いますし、同じ小売店でも海外仕立てなのか、国内仕立てなのか、全部手縫いなのか、一部ミシンなのか……と変わってきます。

きものっていろんな人たちが関わっているんだなぁとも言えますよね。

まとめ
〜お買い物リテラシーを持つ、きもの美人へ〜

きものや帯の値段は何が原因でこんなに違うのか。原料、作り方、流通
と3つの点からお届けしてきました。

読んでくださった読者さんがくださったご感想がとても嬉しかったので、シェアさせていただきますね!^^

上杉 惠理子さま

とっても面白かったです^ ^

これからも楽しみにしてます♡

0さん

メルマガの
値段が変わるポイントシリーズ、
大変勉強になりました〜!
おもしろかったです!!

Aさん

本日も ありがとうございます!

着物の値段は ほんとうに不思議でした。

同じ絹であっても値段が違います。

着物を購入するのは、不動産並みとは言いませんが、
私にとっては、とーっても
チャレンジ精神が必要なことです。

Sさん

こうやって着物の出来上がるまで、
商品として顧客の目の前に届く前の経過を知ることで、
私のような、
着物のことを知らず、つい
「商品」としてのみの部分だけを見、

評価してしまう人間には、勉強になります。

Mさん

ご感想を寄せてくださったみなさま、お読みくださったみなさま、本当にありがとうございました!

読んでいただけてお役に立つことができてとっても嬉しいです^^

私が知っているのは業界のまだまだ一部なので、もっともっと勉強してお伝えしていきたいと思います。

私も今回改めてまとめながらやっぱり、きものや帯の値段は難しいなぁと思います。

書籍のようにどこで買っても同じではないし

家電のように価格ドットコムで店舗比較することもむちゃくちゃ難しい。

きものや帯って型番があって、みんな同じに作る工業製品よりも、どんなにブランドものの「桃」でも甘さは食べてみないとわからない…みたいな、
農産物に近いのです。

結果、

きものの値段はわかりにくいと思われ、

それがさらにきもの屋さんに入りにくい…売り込まれている感がある…と消費者が感じ、

きものはハードルが高いというネガティブイメージの一つになっているんだと思います。

この状況を変えるためにはどうしたらいいか。

お店側が消費者にわかりやすく伝える努力も必要ですが、私は消費者も学んだらいいと思います。

作り手、お店のスタッフ、消費者この間の知識のギャップが大きすぎることが今のきもの業界の課題の一つ。

業界を成長させるためには消費者が成長することが一番早いと他の業界をみるとわかります。

私は、和創塾を通じて買い物リテラシーを持つきもの美人を増やしていくことが業界への貢献だと考えています。

なので、和創塾では生徒さんに敢えて きものの専門用語も叩き込み笑、ショップツアーを開催したり経験値を増やすサポートをしています。

きものの未来は、明るい。

だって、きものはとっても楽しくて素敵なものだから^^ 私はそう信じています。

・・・
和創塾
〜きもので魅せる もうひとりの自分〜
主宰 上杉惠理子

「私もきものを着てみたい!
 だけど最初に何が要るのかな?」と思った方へ
この無料電子書籍で、小さな初めの一歩を踏み出しみませんか?^^
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