きものができるまで

人類の織物の原点/結城紬の糸・機織り・染め方・選び方

こんにちは。上杉惠理子です。

結城紬をご存知でしょうか。

鬼怒川を挟み、茨城県結城市と栃木県小山市をまたがる一帯でつくられる織物で 

東の結城紬、西の大島紬

と言われる日本の織物の「横綱」的存在。

結城紬は、記録に残る時点から1500年、伝承レベルだと2000年の歴史があると言われ、人間が手で布をつくる織物の原型です。

日本の文化庁指定の重要無形文化財に指定され、世界のユネスコの無形文化遺産にも登録されています。

文化庁の重要無形文化財に指定されている、きもの関係の織物は比較的いくつもありますが

きもの関係で、ユネスコの無形文化遺産登録をされているのは、小千谷縮・越後上布(2008年登録)と結城紬(2010年登録)のふたつのみなのです。

越後上布も結城紬も、人間が布をつくり始めた原点そのままなところがあり、人類として残していこうとユネスコで登録されたのです。

鎌倉幕府の源頼朝をはじめ、武士の男きものとしてとても人気でしたし、江戸時代には一般庶民にも広がり、吉原に遊びにいくときは仕立て上がったばかりの結城紬に博多の帯を締めて行くのが一番お洒落だったとか。

ものすごく人気で
ものすごく高価だったので

明治以降、機械化が進む中で、結城紬の良さを生かしながら、機械でもっと手軽な値段で作れないかと様々な試行錯誤がされます。

その結果、結城紬は「え!?これも結城紬って言っちゃうの?」と思うほど、ほんとに幅広くいろいろなものが出回っています。

反物の品質を証明するはずの証紙も、ぱっと見では違いがわからないようなさまざまな類似マークが出まわっています。

価格も私がこの2~3年で手にとって見たものでも、新品の反物一本で 5万円から200万まで幅広く、どれも「結城紬です」と紹介されます。

…ややこしい笑

ですが最近、いろいろ調べていくうちに、おもしろいと感じるようになりました。絹織物なのだけど、布として結城紬と他の織物とはかなりの別モノだわと。

私、本当に結城紬を着ることになったら長生きしたいぞと笑

そんな結城紬のお話を、この記事ではとっぷりと書いてみます。

この記事では、ユネスコ無形文化遺産に登録されている
結城紬を中心にお話していきます。top of top から理解していった方が、わかりやすいと考えたからです。

なので、この文章を読んで今、自分の手元にある結城紬が最高級のものとは違うなと思われるかもしれません。

ですがそのお手元の結城紬が、素敵な一枚の結城紬であることは変わりません。

数千年の織物の歴史の中で生まれ、たくさんのお蚕さんの繭からつくられ、たくさんの人の手がかかって今、あなたの手元にある一枚。

最高級品でなくてもそれは一つの視点でしかない。どうぞ今まで通り、いえ、今まで以上に、大切にたくさん着てあげてくださいね!^^

まずは絹糸のお話から

結城紬ってどんな紬?
というとよく言われるのがこんな表現です。

  • 軽い
  • あたたかい
  • 丈夫で長持ち
  • 年月とともに風合いがよくなる

この結城紬の特徴が生まれる理由は、

絹の「糸の取り方」にあります。

このブログでも何度か書いていますが、絹糸を作るのは、お蚕さんの繭です。

お蚕さんは繭をつくるときに自分でタンパク質の成分を吐き出し、頭を八の字に振りながら、1〜2日ほどで自分を包む繭「コクーン」を作ります。

その繭を解くように、ひとつの繭から綺麗に糸を取ると、1300〜1500mの長さになります。

…cmじゃないですよ!笑

mですよ!!

直径3cmほどの繭玉を解いて一本にすると、1300〜1500mの長さになる!

*この長さはお蚕さんの品種や雌雄で変わります

この解いた糸を途切れさせずにいくつも束ねて、(繭1個の糸では細すぎて人間の手では扱えない)、バラバラにならないよう ネジリを加えることで織ったり縫ったりする1本の絹糸になるわけです。

ネジリながら糸にすることを「撚り(より)」をかけるといいます。撚りをかけることで糸の強度も増すので、お召などは1mの糸に数百回、多いと1000回以上撚ることで非常に丈夫な布になります。

こうして、繭から解くようにとった一本の糸を、束ねて撚りをかけた絹糸を、通常「生糸(きいと)」と呼びます。

細く長く繋ぎ目も少ない「生糸」だからこそ、シルクの布は薄くて滑らかで美しい布になるわけです。

ちなみに、糸をとらずにそのままにしておくと、どうなるでしょう?

繭を破ってお蚕さんが、成虫になって出てきます。

繭が割れてしまったら、1kmを超える1本の糸にはなりません。

だから、お蚕さんのサナギが入っている状態で繭は熱処理をされたり冷蔵されたり、またはそのまま湯に入れて糸を取り出していきます。

絹糸はお蚕さんの命と引き換えです。

というより、絹糸はお蚕さんの命そのものと私は思っています。

しかも、きもの1反に使われる繭の数は3000個ですから。

だから、きものは、いきもの なの。

小紋や色無地、訪問着など、染めのきものをつくるときは、お蚕さんの繭を解くようにして途切れさせずに、ずーっと一本の糸にして取り出します。

さて。それでは結城紬のお話。

結城紬はこの生糸を…

使いません。

こんなに書いてきたのに!!!笑

結城紬の糸は「綿」だった

では結城紬で使われる絹糸は、いったいどういうものなのでしょうか。

結城紬の糸は「真綿手紬糸(まわたてつむぎいと)」と呼ばれます。

真綿から、手でつむいだ糸、です。

まず真綿というのはこちら。

繭をお湯に入れながら広げて、何個分か重ねたもの。

このしっとりフワフワ感…!!ほんっとたまらない触り心地❤

ぜひ触ってみて欲しい!

今「綿」というと私たちはコットンの綿を想像しますが、昔は「綿」とは繭を広げた、この絹の真綿のことでした。

お蚕さんが成虫して出てしまい割れた繭や規格外に小さい繭など、生糸用として売れず残った繭をこうして真綿にして、布にしたり布団の綿にしたり、農家さんが自分たちで活用していました。

江戸時代にコットンが日本でも広がってから、絹の綿は「真綿(まわた)」、コットンの綿は「木綿(もめん)」と呼ばれるようになったわけです。

結城紬をつくるためには、この真綿から手で糸をつむいでいきます。

棒状の「つくし」という道具に、真綿をひっかけて、糸を切らないよう同じ細さで引き出しながら、手前の円柱の器「おぼけ」に入れていきます。

手つむぎですけど、熟練の方が行うとほんっとに細い糸ができます…!!

どんなに手の早い人でも、結城紬一反分の糸を取るために2〜3ヶ月を要するお仕事です。

でね。
この糸をとるときに、細さとともに大事なポイントがあります。

それは「撚り(より)」をかけないこと。

ねじらずに、そのまままっすぐ、糸を引っ張り出すこと。

これが軽くて暖かい、そして丈夫な結城紬の秘密。

撚りをかけないからこそ、糸が空気を含み結城紬独特のあたたかさが生まれ、他の紬の反物に比べ、同じ長さでも実際 軽くなるそうです。

また、生糸のきものは、強度を出すために何度も撚りをかけますが、
(お召なんて1mで1000回とかの強撚糸!)

結城紬は、布になったときに糸がだんだんと綿に戻っていき繊維が複雑に絡み合うことで丈夫になるのです。

経糸・緯糸を生糸で十字に織った布とは、全く違う布の構造になる…!!

綿を着る、ってまさにこういうこと!!^^

ちなみに。
撚りをかけないということは、糸がばらばらになり引っ張り出した側からまた綿に戻ってしまいますよね。どうやって糸のまま織るのでしょう?

ばらばらにならないようにどうするかというと、人間の唾液をつけるのです。

糸取りさんが自分の唾液を指につけ、糸に唾液をつけながら引っ張り出します。

これ、水ではダメなんですって。水だと乾くとすぐに糸がばらばらになっちゃう。

そしてできれば糸取りさんは、薬などを飲んでいない方が良いそうです。飲む薬によっては糸が変色したりする可能性があるからです。

最後、布になったときにお湯に入れて糊を落とすので、そのときにこの唾液もきれいになるので気にしないでくださいね、とのことです^^

へぇ〜〜♪

無形文化遺産に登録されている本場結城紬は、この無撚糸の真綿手紬糸を経糸にも緯糸にも使っていることがひとつ目の条件。

真綿手紬糸100%です。

撚りをかけない無撚糸で、布を織るということはとても珍しく、世界でも結城紬しか残っていないそうです。

それもあってユネスコ無形文化遺産に認められたと言えます。

ですがこの真綿手紬糸をとるお仕事がとてもとても手間暇かかるもの…!!

結城紬でももっと手軽な結城紬を作れないかと工夫されて登場するのが「手紡糸(てぼうし)」や「絹紡糸(けんぼうし)」という糸です。

手紡糸(てぼうし):
真綿から機械で最低限の撚りをかけながら糸にしたもの。

絹紡糸(けんぼうし):
生糸をつくったときの残りの糸などを集めて、綿状にして機械で糸にしたもの。こちらも撚りがかかる。

機械を使いながら、結城紬の風合いを残せないかと工夫した方がいたのですね。

もともとは真綿手紬糸で布を織っていた他の紬産地も、縦糸は生糸、緯糸は手紡糸を使ったりとだんだんと変えていきます。

大島紬のように縦糸も緯糸も全て生糸に変えることで、柄を細やかに出す方へ進化した紬もあります。

どれがいいかというより、そういう違いがある。

結城紬の手仕事をじっと見ていると、「紬」のきものの原型が見えてきます。

手織りの織機は高機と地機の二つがある

布の原点が残る結城紬も、機械の動力を使わない手織りで織っていきます。

きものを織る手織りの機には、大きく2種類あります。

ひとつが高機(たかばた)
もうひとつが地機(じばた)。

↓ こちらが高機

↓ こっちが地機

…この写真だけで違いがわかった人は天才です!!!

もうひとパターン、写真をご紹介します^^

↓ こっちは高機

↓ こっちが地機

座っている織り子さんから見て、縦に張っている糸が経糸(たていと)。
経糸の間に杼(ひ/シャトルのこと)に巻いた緯糸(よこいと)を通して織っていくわけです。

高機と地機の大きな違いは、

経糸の張り方です。

高機は経糸を織り機に張り続けます。なので2枚目の高機の写真では織り子さんが座っていなくても経糸がピンと張っている。

地機は経糸を片方は織り機に巻いて、もう片方を織り子さんの腰で引っ張ります。

1枚目の地機の写真で、織り子さんの腰にタオルが当たっているのが見えます?

そして2枚目の地機の写真では、織り子さんが織り機から離れようとして経糸を緩ませている。

地機織り子さんが織っていない時間は、こうして腰から外されるので経糸が緩むのです。

高機と地機。
大きな違いはこの経糸を張り続けるかどうか。

地機を織る織り子さんは、両足を均等にふんばって身体で経糸を真っ直ぐに張るという高機にはない、もうひとつの技術が必要になります。

私も高機は体験で織らせていただいたことがありますが、地機は体験したことがないなぁ。

歴史としては、地機の方が織り機としては古く、高機の方が地機から発展していったもの。

今、手織りといわれる布のうち、95%と大半は高機で織られているそうです。

大島紬も高機ですし、沖縄の花織なども高機。他の紬や帯の産地でもほぼ高機です。

ユネスコ無形文化遺産の結城紬の登録条件のふたつめは、この経糸をゆるませる地機で織ることです。

なぜ結城紬は、わざわざ地機で織るのでしょう?地機で織ると何が良いのでしょうか?

真綿手紬糸は地機でしか織れない

なぜ結城紬は地機なのかというと、その前にお話した糸と深く関係があります。

結城紬はお蚕さんの繭をふわふわ広げた真綿から撚りをかけずに、細く一定で引き出された「真綿手紬糸」を使います。

軽くてあたたかく、ふんわりとした手触りと結城紬の一番の特徴を出すのは、この真綿手紬糸のおかげです。

この真綿手紬糸は撚りもかかっていないので、高機のような織り機で経糸をピンと張り続けると切れやすくなる。

切れなくても、糸が疲れちゃう。

だから、特に上質な細い真綿手紬糸ほど、糸への負担が少ない地機で織ります。

織るときだけ、織り子さんの腰で経糸をピンと張って緯糸をいれる。

織っていない時間は、織り子さんも、糸も、休む。

もうひとつ高機と地機の違いは、緯糸を入れて打ち込む音でしょうか。

高機で織っているときの機織りの音は

シュっ(杼に通した緯糸を通す)
トントンっ!(手前に打ち込む)

と小気味よい軽やかな印象があります。

地機の機織りの音は、こんな軽やかな音ではないんですね。

シュッ

ガンガンガンっ!!!

…かなり大きな迫力ある音!!それだけ強い力で緯糸を手前に打ち込んでいくのです。

高機で織るとき、もし柄がずれたりすると緯糸をほどきやり直すことができますが、地機の結城紬は、一度緯糸を打ち込んだらもう戻ることができません。

全身で経糸を張りながら強い力で緯糸を打ち込んでいく。この打ち込みの回数は一反のきもの織るまでに3万回ともいわれます。

こうして強く打ち込むことで、ふんわりとした糸が丈夫な布になっていくのですね。

真綿手紬糸でも、紡いだ糸の太さや経糸を補強する糊の加減などによって、高機で織ることもできます。

なので、真綿手紬糸100%であっても、高機で織った結城紬と地機で織った結城紬があります。

同じ結城紬でも、地機で織ったものは高機のものと比べ販売額で50万円は違ってくるなぁというのが私の最近の感覚値です。

この値段に現れる違いは、地機で織ることの大変さがあり、さらに地機でないと織れない糸があるからと今は理解していますが、値段におさまらない本当に大きな違いがあって、もっと深く、その違いを感じられるようになりたいと思っています^^

絣という神業

重要無形文化財並びにユネスコ無形文化遺産の結城紬の登録要件は3つあります。

ひとつ。真綿手紬糸であること

ひとつ。地機(じばた)で織ること

そしてもうひとつ、3つめの登録要件があります。

重要無形文化財並びにユネスコ無形文化遺産に登録されている結城紬の3つめの条件は、絣(かすり)くくりを手捻り(てびねり)ですること。

例えばこちら。

よーく見ると、地の色は茶色で白い六角形&中央に点が入った亀甲(きっこう)の柄が入っています。この亀甲の柄は、絣(かすり)で出している。

絣(かすり)とは、糸の状態で地の色と模様の部分を染め分け、織りながら柄合わせをしていって柄を出す織りの技法であり、その方法で織りあがったときの柄のこと。

ちょっとかすれた風合いになるので、「絣(かすり)」と呼ばれるようになったとか。

絣は日本独自の技法ではなく、インドネシアではイカットと呼ばれたり、世界各地で行われていたものが日本に入ってきました。結城紬に限らず、大島紬も絣ですし、日本各地に絣を入れたきものは、いろいろとあります。

重要無形文化財、ユネスコ無形文化遺産で登録されている結城紬の絣の特徴は「手びねり」で絣を出していることです。

手びねりというのは、絣模様になる部分を、木綿糸などで手作業でくくり、染まらないように防染すること。

↑この写真の場合は最初に全体を薄い青で染めて、絣の柄にしたいところを白の木綿糸でくくり染まらないようにしています。

このあと、全部をくくり終えたら、さらに濃い色の染料にざぶんと漬ける。

そして、白の木綿糸を外して 布に織っていくと濃い色の布地に薄い青の絣模様が出る。

…伝わります??

この手びねりの絣くくりは、くくった部分が間違って染まらないよう、ものすごく力を入れて縛る必要があるため、男性の仕事なのだそうです。

結城紬の絣の柄は、いろいろな柄があるのですが中でも有名なのが、先ほど出てきた六角形の亀甲です。

よく「100亀甲」とか数字が前につくのですが、これは反物の横幅に入っている亀甲の数を表します。

200亀甲、250亀甲なんてもう細かすぎて…意味がわかりません笑

というか、そもそも。
なんで糸にそんな細かな柄を入れて織ったときに合うの???なんでずれないの??…神業が過ぎます。謎!!

以前、結城紬の工房にお邪魔して、先ほどの絣くくりをしているところの写真を撮らせていただきました。

そのときに絣くくりをしていた職人さんが、200亀甲を作ったことがある方でした。

「200亀甲なんてそんな大変なことどうしてやろうと思ったのですか?」とお聞きしたら

「どこまでやれるか、やってみたかったから」

……そーなんだ!!!

重要無形文化財 並びにユネスコ無形文化遺産に登録される結城紬である条件は

① 真綿手紬糸で
② 手びねりで絣くくりがされていて
③ 地機で織られたもの

と、この3つの条件を満たすもの。

①〜③この3つは分業になっていて、どれもそれぞれ職人さんが違い、どれも後継者・担い手の問題を抱えていますが、②の手びねりの絣くくりを残すことが一番難しいとお話されていました。

もっと手軽に絣をつける方法は、手びねり以外にも方法があります。

例えば、糸で縛るところを直接筆などで別の色で染める「刷り込み絣」という方法。また、絣を入れない無地一色のものや縞模様などの結城紬もあります。

ちなみに、草木染め/天然染料であるかどうかは無形文化遺産になるならないには関係ない、ということになります。

草木染めは、なかなか染まらないんです。例えば藍染。濃い藍色まで染めるためには染めては乾かし、染めては乾かし…と何度も染め重ねていきます。

薄い水色からどんどん色を重ねて深い藍色にしていく…そのグラデーションが綺麗なんですけど♪

撚りをかけない繊細な真綿手紬糸を草木染めで何度も重ね染めをするのは、ものすごく難しく大変なのだそうです。

文字では伝えきれなかったことがたくさんあると思いますので、おすすめの動画をご紹介します。

「明日への扉」
結城紬 織り子 大谷加奈子さん
https://www.athome-tobira.jp/story/012-oya-kanako.html

伝統工芸の若い担い手さんたちを、取材されているテレビ番組です。

真綿手紬糸、絣くくり、地機織り。それぞれ実際どうやっているのか、20分ほどの動画でとてもわかりやすくまとまっています。

ぜひご覧になってみてください^^

結城紬、どう選ぶ?


結城紬のこと、まだまだ語り尽くせなていないのですが、まずは一旦、ここで締めたいと思います。

最後にお伝えしたいことは、この知識をもとに

結城紬をどう選ぶか、ということ。

重要無形文化財並びにユネスコ無形文化遺産の結城紬3条件を書きましたが、この3つ揃った結城紬は今販売されている結城紬全体の中ではかなり希少です。逆にいうと…

この3条件が揃っているものだけが結城紬ではない。

結城紬というのは、茨城県結城市と栃木県小山市にまたがる旧 結城藩でチカラを入れて作るようになった織物。

今の「結城紬」の定義はかなり曖昧で旧 結城藩のエリアでつくられたもの、
もしくは結城紬の影響を受けたもの…というところでしょうか。

もともとオール手仕事で、江戸時代の頃からものすごく高価で憧れの的だった結城紬。

その伝統と手仕事を、そのままなんとか守り続けてきた人もいれば、結城紬らしさを再現しながら機械でなんとか手頃にしようと努力した人たちもいた。

それだけいろいろ開発されるほど、人気だったということなんですよね。 

その結果、様々な結城紬が生まれます。

・真綿手紬糸、地機、手びねりの絣のもの
・真綿手紬糸、地機、刷り込みの絣のもの
・真綿手紬糸、地機、絣なし(無地とか)

・真綿手紬糸、高機、手びねりの絣のもの
・真綿手紬糸、高機、刷り込みの絣のもの
・真綿手紬糸、高機、絣なし(無地とか)

・真綿手紡糸、高機、刷り込みの絣のもの
    ・
   (略)
    ・
・手紡糸、高機、無地
・手紡糸、高機、刷り込み絣

・手紡糸、機械織、無地
・手紡糸、機械織、捺染染    ・

・絹紡糸、機械織、無地
・絹紡糸、機械織、捺染染

とまぁ工程の違いだけでも、これだけいろいろあるわけです。

全ての結城紬が、オール手仕事で高価とは限らない。

この価格差は20〜100倍まで広がります。いろいろあるのが結城紬♪

ただ、どうしても結城紬というと、すごい無形文化遺産の伝統工芸品で高価なイメージが先行するので

お手軽価格な結城紬を紹介されたら、お得に見えて、糸や織り方も聞かずに買っちゃったとか

逆に結城紬だからと手織りで高いものと思って買って、よく見たら機械織りだった…とか

…とまぁ特に現代はいろいろ起こるわけです。

証紙に書いてあることを読み取る

見極め方はまずは、よく反物に貼ってある証紙を見ること。

証紙とは反物の品質保証シール。

結城紬に関わる産地の組合はいくつかあって、これまたややこしいのですが、まずは書いてあることを見るのが一歩目。

嘘はもちろん書かないので、書いてあることはそのまま受け取ってください。

ポイントは書いていないことをどう読み取るか。お店の人に聞くか、自分で調べて考えていきます。

▼例えばこちら。本場結城紬卸売協同組合の証紙は、金の合格丸シールを含めた4枚でワンセット。

右のグレーのシールに地機と書いてあり、左から二番目の緑のシールに真綿手紬糸100%と書いてある。

絣模様は入っていないけれど、真綿手紬糸で地機織りだから、ユネスコ無形文化遺産級の糸なんだなとわかる。

▼こちらも本場結城紬卸売協同組合のもの。先程の証紙と一箇所違うのが右のオレンジのシール。


右のオレンジのところに高機と書いてあります。
左から二番目の緑のシールに真綿手紬糸100%と書いてある。縞(しま)模様なので絣ではないなとわかる。

*右の金の合格印の下にある横長のシールは「尺幅以上」と書いてあり、男性も仕立てやすい幅広の反物という意味です。

▼こちらは結城紬の流れを組む茨城県結城郡織物協同組合の結城紬の証紙。通称 いしげ結城紬 です。

 

糸について詳細は書いていませんが、機械で糸をつむいだ手紡糸や絹紡糸を使用しています。

機織りについても書いていませんが、いしげ結城紬は動力織機。機械の手を借りますが、実際は細々人の手がかかるお仕事です。

絹紡糸で機械織りでも、絹のきものであることには変わりなく、それはそれで大きな価値がある。

手仕事にこだわらなくても、柄や色が気に入って選ぶのも全然アリ♪

この幅広さを知って、自分でどこにどのくらいこだわって選ぶかを考えたらいい。

お店に任せきりにしないことが納得のお買い物の原則

でも、正直よくわからないよね…笑 私も証紙の違いがわかるようになってきたのは最近のこと。

きものを作る側、売る側にそんなじゃわからないよー!!と文句を言いたくなることも多々ありますけど…

私は、自分自身を含め、私たち消費者側のきものの買い物リテラシーを上げたい。

リテラシーがあるというのは、必要な知識を持っていることであり、自分の買い物は責任持って自分で選ぶと自立している状態だと私は思っている。

売る側が変わるのをただ待つより、私たちが先にリテラシーを上げた方がきものの世界全体が 盛り上がる突破口だと思うの。

めんどくさいけど!!!笑

わかりにくいけど!!!笑

この曖昧な感じがまた、大量生産の工業製品にはないおもしろさなのかもしれない。

私はいつか絣は入っていなくていいから、真綿手紬糸で地機織りの結城紬を着たいです❤︎

着込むほどに糸の毛羽が取れて、艶が出て滑らかになっていくという、結城紬の真綿手紬糸の真髄を自分で体感したい…!!

買ってからも何十年かかるやら。
そこまで長生きしたいと思います笑

最後までお読みくださりありがとうございました!

和創塾
〜きもので魅せる もうひとりの自分〜
主宰 上杉惠理子


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