きもののお手入れと収納はどうする?

きものの裾が破れたら?八掛交換のお手入れレポ

こんにちは。上杉恵理子です。

「きものは、裾の裏地が破けたらお手入れのタイミング」

と私はいつもお伝えしています。

裾が破けるってどういうこと??と聞かれるのですが、2021年秋頃、愛用の一枚が見事に破けました。

裏地が破けるとはこういうこと!!

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何度も着て、歩いているうちに、裾と足袋が擦れたりすることで裏地がダメになります。ここまで破けてしまうと、このままほつれ直しをすることはできません。

こうなったら仕方ない。

解いて洗って、新しい裏地を選んで仕立て直してもらうタイミング。

この記事では、裾が破けたときの「裏地交換」をどのように行うのか、お伝えします。

きものの裏地は、八掛と胴裏がある

ここまで「裏地」と言ってきましたが、正確に言うと、きものの裏地は「胴裏」と「八掛」と二つにわけることができます。

  • 胴裏(どううら):
    上半身の裏地。何も染めていない白生地のことがほとんど。
  • 八掛(はっかけ):
    袖と裾周りにつける裏地。袖口と裾まわりに色が染めてあり、袖口と裾まわりに1~2mmほど色が出て、動いたときにもチラリと見える。

胴裏は着てしまうと周りからは見えません。

ですが、八掛は表から見ると裾と袖口に1mm幅程度でチラリと見えます。

畳んでいる状態で自分で見ている以上に、着たときに周りの方には意外と八掛はよく見えます。

裏地なのに、少しだけなのに、意外と目立ち全体の印象に影響するのです。

動いたときにチラリと見える八掛にこだわるのが、きもののおもしろさのひとつです。

通常の八掛は一色でベタ染め or グラデーション染めのものがほとんど。ところがこの小紋は、今どき珍しい朱の花菱柄でした。

裾が破けたこのきものは、2018年頃に母を通じてご近所さんからいただいた小紋。菊、藤、松など四季の花たちがめいっぱい描かれています。

華やかですし、白いお花の抜け感が好きでワンピース感覚でよく着ました。

花菱柄の八掛を外すのはとてもとても残念だけど…思い切って替えて、まだまだ着ようと決めたのでした。

裏地を外すなら洗い張りができるも確認!

2021年11月。さぁ八掛を替えよう!と、母がずっとお世話になっている 地元のきもの屋さんに持っていきました。

こちらはお直しやクリーニングのご担当者さんがいつもいらして、ゆっくり相談できるのが嬉しい❤︎ 

当初、私は八掛の交換と一緒に、洗い張り(あらいはり)もお願いするつもりで行きました。

洗い張りとは、表地も全部ほどき、一度反物の状態に戻してから、水にくぐらせて洗うこと。

洗い張りをすると、汚れも落ちるし、絹のツヤや光沢感が戻り、新品のように美しく甦ります。

絹のきものは、普段は干して畳んでしまうだけ。洗い張りをするのは、数年に一度のとっておきのお手入れ。なので、裏地を外すときに、一緒に全部解いて洗い張りをするのがおすすめです。

ひと昔前までは、女性たちがお家で、自分たちのきものを解いて、洗って、仕立て直してと、自分で洗い張りを行い一枚のきものを大事に大事に着ていたそうです。…すごい!!

私は自分で洗い張りはとてもとてもできないのですが…苦笑、こうしてプロに洗い張りをお願いして、長くきものと付き合っていきたいなと思っています。

今回は八掛交換と洗い張りを一度にお願いしようと思って、ご相談に行ったのでした。

ところが!

仕立てご担当のベテランのお母さんと話していたら…

染めのきものは、洗い張りをするとどうしても2cmほど丈が詰まって短くなると教えていただきました!(織りのきものは、洗い張りしても詰まることがないそうな!)

「染めものはどうしてもねぇ〜 詰まっちゃうのよ〜」

とのこと。

そうすると、この花柄小紋はもともと私には短めだったこともあり、2cmも詰まると丈が短くて、私にはいつも通り着れなくなっちゃう!!

それは困るーーーーー!!!

洗い張りをして、私サイズの丈にするなら、帯で隠れる部分に別布を足すしかない。そのためにはお腹あたりで、きものをバッサリ切ることになる。

切るのはまだイヤーーーー!!!

ということで、今回は洗い張りは見送りました。

全部は解かず、八掛だけを替え、「丸洗い」というドライクリーニングだけかけることにしました。それならいつも通り着られる身丈になるだろうと。

そうしてまたたくさん着て、次に破けたときには、洗い張りをしてお腹周りを切って!足し布をしよう、と計画を立てることができました。

そしていよいよ、新しい八掛選び!

八掛の見本表も見せていただきました。

この小さな見本表だけで判断していくのは難しいのだけど…きものの裾に合わせながら、これだと重くなるよなぁ、これは地味になりそう、と想像力をフル回転。

最後は えいやっ!と決定^^ どうなるか…仕立てあがってくるのがドキドキです。

お預けする期間は2ヶ月ほど。さぁ、どう変わって戻ってくるでしょうか?

八掛交換できものが生まれ変わる

そして年末、お預けしていたきものが帰ってきました!!

表地の葉っぱの色に合わせて、グリーン系の八掛に替わりました!

比べてみると…

いかがでしょう??かなり変わりませんか!?!?

朱色の可愛さからグッと大人っぽくなった!重くなりすぎず、なかなかいいチョイスだったなぁと満足❤︎

動いたときにチラリと見えるこの裏地を替えるだけでも、きものの印象がガラリと変わる。

嬉しくて2022年のきものはじめに、早速着ました♪

留学生と一緒に初詣!

裏地をかえただけなのに、着ている私も新しいきもののように、とっても新鮮です^^

動画でも八掛が新しくなった小紋を着て話してみました!^^

この裏地で10年ほど着て、50代になったら表の青と同色の裏地にしようと思っています。そうするとまたグッと落ち着いて、もう10年着られると思うのです。

きものを着ることはSDGsな暮らしそのもの

こうして一枚のきものをメンテナンスしながら、大事に着ていくのが私はとても好きです。

自分で買ったものではなく譲られものだからこそ、いっぱい着て、ちゃんとメンテナンスをして、きものの天寿を全うさせてあげたいと思っちゃう。

こんな素敵な宝物を与えられてしまったからこそ、メンテナンスにお金をかけて、きもののメンテナンスをされている方に仕事をつくりたい。

それが、きものという返しきれない大きなギフトをいただいたことへ、私ができるお返しだと思っています。

さらに、エコロジーやサステナブルな観点からも、きものは大切なことを教えてくれます。

先日、環境省のサステナブルファッションの特集ページを見つけました。

環境省 サステナブルファッション
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/

日本で1日に焼却処分される衣類の量は1300トン、大型トラック130台分、といった衝撃的な数字が並んでいます。

日本のアパレル産業で売れ残って処分される服が生産量の半分、という調査もあります。

合成繊維の衣服を洗濯することで、海のマイクロプラスチックが増えていることも指摘されています。

服が大変な環境負荷になっている

リペアしたり一着を大事に着ましょう、不必要に買いすぎないようにしましょう、という提案がこの環境省のページでも書かれています。

きものはまさにサステナブルファッション。

長持ちするし、譲り合いながら着られるし、お直しもできる。絹のきものは普段は干すだけで、洗濯する必要もないし。

2022年の今だからこそ、きものを着るメリットはあると思うのです。

個人的なメリットだけでなく、もっと広い大きな地球規模でのメリットがある。

きもの、一緒に着ませんか??

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【受講案内】和創塾 〜きもので魅せる もうひとりの自分〜 はじめに 〜装いはあなたを伝えるメッセージ〜 こんにちは。上杉惠理子です。 このたびは私が主宰する、和創塾〜きもので魅せ...

それではまた!

和創塾〜きもので魅せる もうひとりの自分〜主宰
上杉惠理子