きものを着こなす

なぜ着物は手縫いで仕立てるの?/和裁士さんの仕事を考える

こんにちは。上杉惠理子です。

数日前に、新卒入社でお世話になった会社の先輩からメッセージをもらいました。

高校2年生の三男くんが、和裁士になりたいそうで

「和裁の良い専門学校を知っていたら教えてくれませんか?」

とのこと。

んまぁ❤︎なんてうれしい!!!

三男くんは現在、普通科ではなく 生活文化科(昔でいう家政科)の高校に通っているそう。一学年80名のうち、男性は彼ひとりで、元気に通っているとのこと!

そして授業で甚平を縫ったときに、縫い目を隠す「キセ」や「くけぬい」など和裁の技術に感動し、和裁士の道を考えるようになったとのこと!!

いやぁ、、なんだかとっても嬉しい!!

そうなのそうなの、和裁ってすごいよね。。!!!

こんなキッカケから、このブログ記事では

なぜ着物は和裁士さんが手縫いで縫うのが良いとされるのか

その理由をまとめてみます。

和裁士さんってどんな仕事?

きものを縫い仕立てる職人さんを和裁士といい、厚労省管轄の技能試験(国家試験)のひとつに和裁があります。

三級、二級、一級と難しくなり、一級和裁技能士さんによるお仕立てを指名できるお店もあります。

技能試験に合格するよう指導してくれる専門学校もありますが、和裁所に就職し仕事をしながら技術を学び試験を受けるという道もあります。

私の母も和裁士でしたが50年ほど前、高校卒業後に上京して和裁所に入って和裁士になりました。

なぜ着物は手縫いで仕立てるの?

最近は仕立て代がお安くなるミシン縫いでできた浴衣やきものもありますし、ミシンと手縫いの併用した仕立て方法を指定できることもあります。

ですが、私はきものは必ず、手縫いのお仕立てをお願いしています。

そもそもなぜ、きものは手縫いなのでしょうか? 

手縫いのメリットは何なのでしょうか?

きものは手縫いが良い理由について、私は3つお伝えしています。

1. 仕立て直しをするため

2. そもそもミシン縫いできない部分が意外と多い

3. 手縫いの方が着心地が良い

このあと順に書いていきますね!

1. 仕立て直しをするため 

きものは一度縫って仕立てて終わり、ではありません。

布が余れば、袖の縫い代を多くとり後から長くできるようになっています。腰回りにも布を折り込み裾を長くできるようになっています。つまりサイズ直しができる。

また、きものは「洗い張り」というお手入れがありますが、これはきものを解いて、一枚ずつパーツを水でしっかり洗って仕立て直すというもの。この洗い張りをすると、きものは新品のように蘇ります。

たくさん着て、もうきものとしては使えないかな、という場合は解いて、四角いパーツに分け、帯、半衿、風呂敷や袋物などにリメイクができます。

ところが、ミシンで縫ってしまうと、まず解くのがものすごく大変です。

手縫いは1本で縫いますが、ミシンは上糸と下糸の2本を絡み合わせて縫います。

▼下手ながら図にしてみました

私は学生時代にダンスをしていたとき、自分の本番用の衣装は自分で夜な夜なミシンで作っていたのですが…縫い間違えたところを解くのがほんっとうに大変!!思い出すだけで泣ける…笑

しかも、ミシンは糸を解いた後、針穴がばっちり残ってしまう。

これもミシン縫いはお直ししにくい理由です。

きものは、人と同じくらい長生き。

きものがその天寿が全うするには、仕立て直しができることがポイントで、そのためにも手縫いの仕立てが欠かせないのです。

2. そもそもミシン縫いできない部分が意外と多い

2020年のステイホームのときに、木綿のきものを自分で縫ってみたことがあります。

▼そのときのレポがこちら(記事は途中だけど、モノは完成しています…苦笑)

ちくちくパックで 木綿きものを自分でお仕立て中♪ こんにちは!和創塾 〜きもので魅せる もうひとりの自分〜主宰 上杉惠理子です。 2020年5月。コロナさんによるステイホームの間...

自分で縫ってみてわかる、和裁士さんのすごさ。。感謝❤︎

このとき自分で縫って気づいたことが、「ミシンでバーっとまっすぐ縫えるとこって少なくない??」でした。

まっすぐに縫う並縫いの他、くけ縫い、額縁縫い、ふた目落とし…など、ミシンではできない和裁の縫い方があります。

特に、縫い目を表に見えないように縫う「くけ縫い」をする部分がめっちゃ多いの…!!!

だから、きものは手縫いなのか〜と思ったのでした。

そして最後の理由がこちら。

3. 手縫いの方が着心地が良い

言葉で表現するのは難しいのですが

敢えて書くなら

ミシンはガチガチに固定して縫われている

手縫いはわずかに縫い目に「遊び」があってストレッチが効く という感じ。 

これはそれぞれの体感なので、人によって違うかもしれませんが、私は本当にこう思います。

遊びがある手縫いのきものだから、思い切って動ける感覚です。

ミシンの方が丈夫そうに思われるかもしれませんが、2本の糸でガチガチに縫われてしまうと、布への負担も大きいのです。

何度も立ったりしゃがんでいるうちに、ビリッと布が破けないか不安になります。

布自体が破けたら、もうお直しできません…!!

この点は、高級洗えるきもの専門店 英の武田社長も、ポリエステルでも全て手縫いで縫う大切さをこちらのyoutubeで話していらっしゃいます。

きもの英youtube
そもそも洗える着物とは? 最高級洗えるきもの専門店女将が語る きもの英の着物の特徴
https://youtu.be/blvbLGGDBHY

手縫いのきものは古くなると、糸はほつれても、布が破れることはほとんどありません。

古くなった糸がほつれることを、和裁士だった私の母は「糸が風邪をひく」という表現をしていました。

和裁士さんがいてこそ、完成する着物

ということで

仕立て直ししながら、長く着続けたい

そもそもミシンで縫うところが少ないなら、全て手縫いでお願いしたい

手縫いの方が着心地が良い♪

という理由で、私はきものは必ず手縫いでお願いしています。

冒頭の和裁士になりたい高校生のお母様からのご質問、和裁の学校については私、直接詳しくないので、木綿きものの専門店 染織こだまさんの4代目 児玉健作さんに伺いました。

染織こだま 児玉健作さん
https://someorikodamas.com/company

児玉さんは和裁学校の卒業生を積極的に採用されているので、各学校ともご縁がある方なのです。

卒業後の就職にも比較的強く、業界でも信頼のある専門学校や、教育制度のある和裁所を教えていただき、先輩を通じて三男くんに伝えてもらいました。

経済的な安定などを考えれば、和裁士は決して煌々と明るい進路とは言い難い。

ですが、お母さんである先輩には、

「私たちの着物生活は、和裁士さんに支えられているんですー!」

「歌舞伎や落語など伝統文化の世界も、きものはもちろん必需品!」

「私は絶対、和裁士さんの手縫いでお願いしてます!」

「三男くんに熱烈応援してる!と伝えてください〜」

とまぁ、若干無責任ながらも熱く伝えました。

先輩も「そんなに意義のある仕事なのねぇ知らなかったわ〜」「私も自分のきものをタンスから出してみようかな」と興味を持ってくれました^^ 

私自身が手縫いのお仕立てを選ぶことはもちろん、手縫いのお仕立てのきものを選ぶ人が増えるように、手縫いの良さを伝えていきたいと思っています。

和裁士になりたい!と思ってくれた高校生を、私たち きものラバーズが応援できることはいっぱいあるはず♪ 

それではまた! 

和創塾〜きもので魅せる もうひとりの自分〜主宰
上杉惠理子